鶴岡を拠点に 全国の頂点を目指す 人(ひと)の情景(じょうけい) scene 11 石井良樹 Yoshiki Ishii 「強引グ・マイウェイ」。プロ雀士である石井良樹さんの、攻めを貫く麻雀のプレースタイルから付いたキャッチコピーです。2022年に日本プロ麻雀連盟の4大タイトルの1つ「王位戦」で優勝して以降、全国で注目される存在となりました。  石井さんが麻雀のプロになろうと決めたのは高校3年生のとき。友達にそのことを宣言したら「絶対なれるわけがない」と言われたそうです。「なれるわけがないと言われたのが逆にうれしかったんですよね。やはりそれだけ難しいことですし、だからこそ絶対になってやると、自分の心に火が付きましたね」。  高校卒業後は東京の企業で働きながら、1年目の9月にプロ試験に挑戦。合格率が20%〜25%といわれる中、見事1回で合格しました。麻雀のプロリーグには階級があり、一番下の階級からスタート。石井さんはプロ初戦でいきなり優勝し、その次のリーグ戦も準優勝と順風満帆なスタートを切ります。 「ただ、その次の特別昇級リーグの決勝は最下位だったんです。そこで3位まで入れば、昇級できたのに、4位だと上がれない。完全に自信を失いました。そして、もう負けるのは嫌だという気持ちから、大会には出ないという負の方向に行ってしまったんです。それからしばらくの間は本当に苦しかったです」。  挫折を味わった石井さんは、8年間東京でプロ生活を送っていたものの、全く結果が出ず、辞めることも考えます。悩んだ末に、子供が生まれるタイミングで鶴岡に戻ってきました。そして、実家の会社に勤めながら、東北プロリーグで、プロとしての生活を続けることを決めます。  そんな石井さんに転機が訪れたのはおととしのこと。東北プロリーグの「天翔位」で2度目の優勝を飾ると、11月には、全国のプロアマ約1、000人が出場した第47期王位戦で優勝し、「王位」の称号を獲得しました。 「優勝したときは本当に信じられなかったですし、辞めないで良かったと思いました。でも一番うれしかったのは、自分を応援してくれる人がものすごく増えたことですね」。  石井さんが対局中に心掛けていることは、守りに入らずとにかく攻めることと、鶴岡らしさを出すこと。 「対局中も庄内弁でしゃべっています。『まぐまぐどなる』とか(笑)。それが受けて名前も覚えてもらえるようになったので、″鶴岡≠ヘ私の武器になっているんです」。  大会に出場するたびに鶴岡のPRもしている石井さん。自分が活躍することで、鶴岡のファンがもっと増えるよう、今後も大きな大会で結果を残したいと語ります。 ▲ふだんは主に管工設備を施工する会社で仕事をしています ▲王位戦で優勝したときの1枚 ▲対局時はとにかく無心です 石井良樹( いしい・よしき)さん(35) 鶴岡市出身。日本プロ麻雀連盟東北本部所属。段位は4段。2020年・2022年に東北プロリーグ「天翔位」優勝。2022年に同連盟「第47期王位戦」優勝。現在は実家の会社で働きながら、東京や仙台で開催される大会に出場。卓球も得意で、鶴岡三中では県大会団体戦優勝、鶴岡工業高校では県大会団体戦準優勝の主力メンバー。3児の父。