‐連載‐ 広報 つるおかの医療相談 荘内病院の医師が疑問を解決! vol. 5 「慢性硬膜下血腫」と「慢性腎臓病」  この連載では、医療の身近な疑問に、荘内病院の様々な診療科の医師がお答えします。5回目となる今回は、脳神経外科と内科(腎臓内科)です。  当院では4月から開始された医師の働き方改革に伴い、これまで時間外でも行っていた病状説明などは、緊急等の場合を除き、原則として月曜〜金曜日の勤務時間内に行うこととしています。医師の時間外勤務を減らす取り組みにご協力をお願いします。 ◯問合せ 荘内病院総務課?26‐5111 脳神経外科 慢性硬膜下血腫とは? 頭にけがをして救急外来を受診した際、1か月〜2か月間は慢性硬膜下血腫に注意するように言われました。どのような病気でしょうか。  慢性硬膜下血腫は、40代〜60代の中高齢者に多い病気です。比較的軽微な外傷を負った後、3週間?3か月後に脳の表面に血腫ができて徐々に拡大し、歩行障害やまひなどを発症します。ごく軽い外傷の場合もあり、2割の方は外傷がはっきりしません。けが直後のCT検査は正常でも、脳の萎縮が強い方、血液をサラサラにする薬やお酒を飲む方は危険性が高まります。普通は、体内に出血すると血液は固まりますが、慢性硬膜下血腫は液体のまま、ゆっくり拡大します。  治療では頭皮に局所麻酔をして頭蓋骨に直径1cmほどの穴を開けます。そして、血腫を洗浄し、柔らかい管を留め置いて1日〜2日間かけて血腫を排出します。全身麻酔が不要なため、100歳前後の方でも手術がで きます。多くは回復しますが、来院が遅れた場合や症状が急激に悪化した場合などは回復具合が変わってきます。現在、年間に数十例の手術を行いますが、高齢化もあり、増加傾向です。認知機能の低下によって発症する方も多くいますが、治療可能な認知症の1つです。  比較的若い人でも発症することがあり、若いから大丈夫とは言えません。気になることがあれば早目に受診ください。 荘内病院の脳神経外科  脳卒中や頭部外傷など緊急疾患を的確に治療できるようにしています。特に頭部外傷では数分の違いが生死を分けるため、救急センターで手術しなければ手遅れになる場合もあり、近くの病院での迅速な治療が必須です。一方で、脳腫瘍などは状況に応じて大学病院を紹介する場合もあります。 脳神経外科医師 佐藤和彦 内科(腎臓内科) 尿検査で、異常が見つかりました 昨年の健康診断で尿たんぱく、尿潜血が陽性でしたが、今のところ具合は悪くありません。更に詳しい検査や治療を受ける必要はありますか。  尿たんぱくや尿潜血が続くときは、具合が悪くなくても慢性糸球体腎炎などの腎臓病が始ま っている可能性があるため、医療機関での再検査をお勧めします。早く診断することで、病気の進行を抑えられる場合があります。  たんぱく尿などの検尿の異常、あるいは、血液検査のクレアチニン値により推測できる腎臓の働きの低下が3か月以上続いている状態を慢性腎臓病(CKD)と言います。また、糖尿病、高血圧などもCKDの原因となります。腎臓の働きが少しずつ失われることもあり、血液透析、腹膜透析、腎移植などの腎臓の働きを補う治療が必要になる患者さんもいます。薬による治療、食事などの生活習慣により腎臓の働きを長持ちさせる対策もあります。  CKDは自覚症状がなく気付きにくいことが多いので、尿検査、血液検査による健康診断を毎年受けることをお勧めします。    荘内病院の内科(腎臓内科)  CKDを早期に診断することの大切さ、腎臓を守る生活習慣などを市民に伝える取り組みを行っています。  その1つが、毎年秋に開催される天腎祭≠ナす。荘内病院、鶴岡地区医師会、鶴岡協立病院をはじめとする医療機関が協力し、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士など様々な職種の方が登壇する、腎臓病に関連した市民公開セミナーです。管理栄養士から塩分制限のコツなど食事に関するアドバイスを聞くこともできます。開催が近くなりましたらお知らせしますので、ぜひご参加ください。 内科医師 安宅謙 令和6年5月号 No.314 環境に配慮し植物油インキを使用しています