人の情景 scene14 アルゴディア研究会 Argodia Kenkyukai 六十里越街道の歴史と未来をつなぐ 六十里越街道は、庄内地方と内陸を結ぶため、1、200年前に開かれた山道だと伝えられています。アルゴディア研究会は、その六十里越街道を活用して地域おこしをしようと平成14年に発足しました。  「いろんな人に〝アルゴディア〟とはどういう意味か聞かれますが、『理想郷』という意味で使われる〝アルカディア〟と、『歩こうよ』の庄内弁〝歩ごでぃ〟を組み合わせた造語です。」と話すのは、名前を考えた会長の小関祐二(こせき・ゆうじ)さん。これに対し、「最初は笑ったけれど、すっかり定着して、今は誇りに感じています。」と事務局長の安達一春(あだち・かずはる)さん。  名前に誇りを感じられるのは、自分たちがこれまで行ってきた活動に絶対の自信があるため。そして、歴史のある六十里越街道に大きな可能性を感じているためです。  「1、200年の歴史の中で、物流や戦の道として使われましたが、一番は信仰の道だと思います。多くの人が生まれ変わりの山である湯殿山を目指し歩いた。この歴史はつないでいく価値があると考えています」。  発足当初、六十里越街道の地図は略図しかありませんでした。そこで最初に取り組んだのは、巻き尺片手に街道を歩き続け、六十里越街道の地図を作ることでした。  「やはり安全に安心して歩けることが大切です。地図は欠かせませんし、整備も必要。標識を作り設置しましたし、草刈りは定期的に行っています。その成果もあり、毎年一定の人が六十里越街道に歩きに来ていますが、まだ認知度は低いと感じます」。  活動を始めて23年になるアルゴディア研究会は、発足時から100年続けることを合言葉にしてきました。  「23年間続いてきたのは、地域を愛する人が集まり、街道を歩いて魅力に取りつかれた人が集まってきたから。」と語る安達さんは、更にこう続けます。  「この会では70代前半はまだ若手。80代のメンバーもまだ主力として、山に登り、草刈りや案内をしています。また、ヨーロッパのサンティアゴ巡礼路のような『祈りの道』として再びよみがえらせたいんです。そのためにも、もっとたくさんの若い人に参加してもらって六十里越街道を一緒に盛り上げていきたいです」。  「残雪から初冬までの季節を何度も歩いていますが、歩くたびに景色が違って、全く飽きません。」と安達さんが言うと、「全国いろんな街道を見たけど、やっぱり六十里越街道はどこにも負けない。」と小関さんも熱く語ります。  長い歴史があり、自然の変化も楽しめる六十里越街道への愛を原動力に、これからも守り続けていきます。 アルゴディア研究会 平成14年結成。現在は朝日地域住民を中心に30代~80代の28人の会員が活動。10月に環境省自然歩道関係功労者表彰を受賞。お話を聞かせてくれたのは、小関会長(左)と安達事務局長(右)。 また来たいと思ってもらえる六十里越街道を目指し、整備と保全に努めています。 11月9日開催の「出羽の古道六十里越街道魅力発信フォーラム」では、自然歩道関係功労者表彰の伝達式が行われました。