モンテディオ山形で培った 経験と技術を母校のために 人(ひと)の情景(じょうけい) scene 16 根本亮助 Ryosuke Nemoto  モンテディオ山形(以下、モンテ)のフォワードとして活躍した根本亮助さん。プロ引退後、15年間下部組織のコーチや監督を務め、昨年2月から、母校である鶴岡東高校サッカー部のコーチとして指導に当たっています。  モンテ一筋だった根本さんに転機が訪れたのは令和5年10月。県の選手権大会で、同校サッカー部が予選敗退した直後でした。  「監督の三浦から、『サッカー部の成長のために、一緒に指導をしてくれないか』と誘いを受けたんです。三浦とは、高校時代の同級生でサッカー部の元チームメイト。卒業後もずっと交流を続けていた友人なので、これも何かの縁だと思いました。その年の11月に行われた県新人選で鶴岡東高校は見事優勝しましたが、その試合を見て、良いチームだなと心が動かされたことも、指導を引き受けた理由です」。  現役時代から、引退後は指導者として地元の子供たちにサッカーを教えたいと考えていた根本さん。コーチに就任してからは、どうしたら選手たちが成長できるかを三浦監督と話し合いながら練習内容を決めています。「ふだんから強度の高いメニューに取り組ませています。試合で良い結果を出すには、息が上がっても正確に1つ1つのプレーをこなせるスタミナと正確性が必要で、そのためには、日頃から平均以上のパフォーマンスを意識することが大切です。指導の部分は三浦から任されている部分も多くあり、やりがいを感じています」。  これまで培ってきた経験と技術を母校に還元するだけでなく、大人として教えられることもあると話します。「生徒たちには技術だけではなく、部活動以外の時間の過ごし方が重要だと伝えています。ふだんの生活でエラーを起こす選手は、サッカーでもエラーを起こす。プレーヤーである前に、人として当たり前のことを当たり前にできる選手に育てたいです」。  「伸びる選手の共通点は、指導を素直に聞き入れる傾聴力や、それをプレーに反映する表現力、そして、自分なりの武器があり負けず嫌いなこと」と語ります。加えて、「サッカーが好きな気持ちも大事」とにっこり。〝好きこそものの上手なれ〟を体現し、プロ選手として活躍した根本さんだからこそ、説得力を持って伝えられることがあります。  今後の目標を聞くと、「まずは全国大会出場ですね。県の新人戦で優勝した実績があるとはいえ、まだまだ選手たちの良さを伸ばしていきたいです」と語る根本さん。子供たちが夢の舞台でゴールネットを揺らす日が来ることを信じ、根本さんは熱い指導を続けていきます。 根本亮助(ねもと・りょうすけ) さん(44) 鶴岡市出身。鶴商学園高校(現鶴岡東高校)卒業 後、1999年にモンテディオ山形トップチームに入団。10年間のプロ生活では、通算224試合出場、41得点の活躍。同校サッカー部のコーチを務める傍ら、県内各地で小・中学生を対象に、ストライカーを育てるためのスクール等を開催している。 ←〝RYOSUKE NEMOTO STRIKER プロジェクト〟 ←根本さんインスタグラム ▲練習に入る前のミーティングでは、謙虚な姿勢やひたむきさといった、ふだんの生活にも通じる心得を言い聞かせる根本さん。部員たちの雰囲気がグッと引き締まる。 ▲高校時代はツートップを組んでいた三浦監督と根本さん。25年の時を経て、2人のベクトルはまた1つに重なった。 ▶「休むな!息が上がっても正確に!メンタル、メンタル!」。厳しくも鼓舞する根本さんの言葉がコート中に響き渡る。部長の佐藤新志(あらし)さんは、「根本さんの声掛けやアドバイスのおかげで120%の力が引き出されます」と語る。