人の情景(ひとのじょうけい) scene19 阿部麻美  Abe Ami ここに暮らす外国人と地域の人たちの懸け橋に 出羽庄内国際村(以下、国際村)で韓国喫茶「ふるさと」を営む阿部麻美(本名、、金美敬(キムミギョン))さん。来日前は、母国の韓国で語学学校等を経営していました。やりがいはありつつも忙しい日々に追われ、将来は田舎でゆったり暮らしたいと思っていたそうです。あるとき、天童市に暮らす同郷の友人を訪れた麻美さんに運命の出会いがありました。 「美しい景色にきれいな住宅団地など、私の理想の暮らしが目の前にあったんです。『このまま山形で暮らしたい!』と強く思いましたね」。 この山形への旅行では、後の夫との出会いもあり、海を隔てた交際がスタート。そして結婚が決まった2001年、麻美さんはついに来日を果たしました。その後、長女を授かり、2004年に夫の転勤で鶴岡に引っ越してきました。? 「当時は、日本語があまり分からず、知り合いも少なかったので、娘を育てるのに苦労しました。特に入園や入学の準備が本当に大変でした」。 子育てをしながら国際村の日本語教室に通ったことをきっかけに、地域の人や様々な国の人との交流の輪を広げていった麻美さん。子供が就学する前、鶴岡に住む同郷の友人と「自由な時間が増える分、私たちだからこそできることをしよう」と空きのあった国際村の交流サロンに韓国喫茶「ふるさと」を出店しました。 「お店には、平日は地域の方や韓国出身の友達、週末は日本語教室の先生や生徒さんがよく来てくれます。ただ食事するだけでなく、家族のこと、学校や会社のこと、楽しかったこと、つらかったことなども話してくれます。中には、給料のほとんどを家族に仕送りして苦しい生活の人もいます。そんな子には、家族のためもいいけど、自分のためにお金を使いなさい、貯めなさい、自分の人生も大切にしなさいと話すんです」。 夢や希望を抱いて日本にやってくる人たちが感じる不安や寂しさ。麻美さんは、自身の経験を基に、そんな方々の親になった気持ちで優しく、時に厳しく一人ひとりに向き合います。また、異国の地で知り合いが少なく、心細さを感じている人が多いことから、お店に集う人たちが交流できる機会も企画しています。 「毎年お店のお客さんと協力して、国際村のワールドバザールに出店したり、海岸でバーベキューや運動会をしたりするんですよ。本当に楽しいイベント。だって食べ物やスポーツには言葉の壁がないですからね」。 母国を離れて暮らす人たちにとって、故郷のように「ほっ」とできる場所を作り出した麻美さん。これからも、お店に集う人たちをいつも笑顔で温かく見守っていきます。 恒例のバーベキューや運動会には麻美さんを慕う人々が国籍を越えて参加している。大縄跳びやムカデ競争など日本式の運動会は外国人に大人気。イベント前には、ごみ拾いで地域に貢献する 韓国で取り組んでいた書道やピアノを再開。趣味の時間も大切にしている 国際村「ワールドバザール」には、鶴岡を離れた「ふるさと」の応援団が集結 阿部 麻美(あべ あみ) さん(62) 本名「金美敬(キムミギョン)」。韓国・釜山出身。2001年に来日後、2004年に鶴岡市に移住。 2009年に友人と2人で出羽庄内国際村内に韓国喫茶「ふるさと」を出店。2024年からは、国際村の外国語講座(韓国語)の講師を務め、料理だけでなく、母国の言葉や文化を紹介しながら、日本と韓国の懸け橋として活躍している。「私は今、最高の場所で最高の人生を歩んでいます!」と語る