うんちでつなぐ科学と市民 人の情景(ひとのじょうけい) scene21 石沢 成美 Ishizawa Narumi 科学の専門的なテーマを市民に分かりやすく伝えるサイエンスコミュニケーター≠志す、山形市出身の石沢成美さん。薬の研究の原材料として、健康なドナーからうんちを提供してもらう施設「つるおか献便ルーム」で働いています。 石沢さんは、昨春に鶴岡に移住する前は、県外で新聞記者として働いていました。コロナ禍だったこともあり、デマも含めた様々な情報が飛び交う中で「科学をいかに分かりやすく、正確に報道するか」が課題だったと言います。 「仕事は楽しかったんですが、山形に戻りたいという気持ちが強くなっていました。そんな中、鶴岡サイエンスパーク内に新設される献便ルーム職員の求人を見つけたんです。これはと思い転職を決意しました」。 つるおか献便ルームは、最先端の腸内細菌科学の研究を市民の健康につなげる、まさにサイエンスコミュニケーションの現場。 「私たちは、ドナーさんのうんちに含まれる腸内細菌を活用し、カプセル薬などを開発する研究をしています。健康なドナーさんの腸内細菌を患者さんの腸に移植し、バランスの取れた腸内環境を再構築する新しい治療法です。現在、潰瘍性大腸炎などの治療を目指しています」。 ドナー同士の交流会が開かれた際には、食生活の情報交換が自然と始まったので、食と健康への意識の高さを感じたといいます。「豊かな食文化が根付き、ふだんから住民が野菜や穀物の食物繊維をしっかり食べている鶴岡は、腸の力を生かす研究を行うのに適した地なんです。多くの方に、ドナー活動を通じて健康になってほしいです。」と話します。 大学時代は鍾(しょう)乳石から太古の気候変動を調べる研究を行うなど、鉱物マニアの一面を持つ石沢さん。石について語り合う場として「石ナイト」というイベントを企画しています。 「石好き≠ニ出会う機会が急に増えました。私は石を研究する立場でしたが、拾うのが好きな人、磨くのが好き、黒曜石が好き……いろんな好き≠ェ重なって語り合う幸せを分かち合いたいと思っています」。 さらに、学生向けフリースペース「つるおかAZITO(アジト)」の管理人も務めます。日頃の悩みや、推し≠語り合う場を設けるなど、若者が自由に過ごし、将来の選択肢を広げられる企画を行っています。 鶴岡での暮らしについて尋ねると、「最高に楽しいです。私、世界一好きな食べ物がだだちゃ豆なんですよ。 収穫のアルバイトにも挑戦しました!」と答えてくれました。 鶴岡への移住が、石沢さんの充実した毎日につながっています。 つるおかAZITOでは大学生と一緒に、日頃の悩みを分かち合うイベント「もやもやお茶会」や、推し≠語る会などを企画している。 大学時代は鍾乳洞をフィールドに古気候学を専攻。実習や調査のため、日本各地の狭い洞内に潜り込んだ。 市内飲食店で開催した「石ナイト」。参加者がお気に入りの石を持ち寄ってしゃべり、異なる観点の石好き%ッ士で新たな交流が生まれた。 石沢 成美(いしざわ なるみ)さん(30) 山形市出身。東京大学理学部卒業後、新聞社に就職。2025年、鶴岡にJターン移住し、メタジェンセラピューティクス鰍ノ入社。同社つるおか献便ルーム長として、先端科学と市民との橋渡しに奮闘中。仕事以外では「つるおかAZITO」の管理人のほか、「石ナイト」を運営する。好きな鉱物は方解石。もらった山菜の調理や食べ歩きを通じて、食が豊かな地で暮らす幸せを日々感じている