これからもずっと おいしい果物を届けたい 人の情景(ひとのじょうけい) scene25 重松果歩 Shigematsu Kaho 櫛引地域の西荒屋地区で両親と一緒に果樹農家を営む重松果歩さん。就農して今年で5年目です。「鶴岡が大好きなので、地元での就職を希望していました。農業に就こうと考え始めたのは、大学のフィールドワークで青森の地域活動に携わったとき、地元はどうなんだろうと思ったことがきっかけです。実家の周りを見渡したとき、農業を営む主な世代は70代後半以上。このままでは大好きな地元が廃れていくかもしれないと感じました。自分が何もしないで畑が減っていくのは嫌だったんです」。  フルーツの里の名前の通り、重松家の畑の周りには、近所の農家の果樹畑が広がります。地区全体で農業を続けていけることが果歩さんにとっての理想です。 「長年農業を営んできた人には、それぞれ大切なお客さんがいます。だから私は、新たな客層を開拓していこうと考えています。ふるさと納税の返礼品として出品することもその取り組みの一つです」。  農園の認知度をもっと上げていきたいという果歩さんは、待つのではなく、自分から出向いてお客さんを増やすことにも力を入れています。 「果物離れが進む若い人に買ってもらいたいと考えています。店舗販売だけでなく、移動販売でいろんな場所に行くことで買う人のハードルが下がると思うんです。そうやってたくさんの人に農園を知ってもらえればと思います」。  農業をやっていてうれしかったことを尋ねると、「毎年楽しみに待ってくれている人がいて、『おいしかったよ』と直接聞けたとき。おいしいものを作りたいと頑張る気持ちにさせてくれます」と笑顔で答えます。  一方で、農作物は天気に左右されるもの。自分の思い通りにはいかないこともあり、難しさを感じていると言います。 「実の大きさだけでなく、糖度や色付きなど生育状況は変わってきます。この道60年の大ベテランの祖父母でさえ、難しいと言うほどです。それでも長年の経験から学ぶことはたくさんあります。昔からの技術や知恵を吸収しながら、新しい解決策を生み出していきたいですね」。  今後の展望を聞くと、「少ない人数で農園を守っていくのは大変です。会社員が副業として1日単位で働くデイワークを取り入れて、農業を体験してもらう。そうやって多くの人を巻き込んで農園を守っていければ。とにかく自分にできることをやり切りたいです」と答える果歩さん。  果物でつながった人とともに歩みながら、これからも多くの人に鶴岡の四季の恵みを届け続けます。 家族で栽培・出荷する果物は、ブドウ、和梨、洋梨、リンゴ、柿など秋の味覚がメイン。初夏にはサクランボも収穫している。 ブドウを収穫する果歩さん。栽培するブドウの品種は約20種と豊富。 移動販売に力を入れるため、販売専用の車を今年初めて導入。なじみのお客さんもできた。 イベントにも積極的に参加している。鶴岡まるごとフェスタでは「食と農のビジネス塾」ブースで出店。 重松果歩( しげまつ・かほ)さん(26) 東京生まれ鶴岡育ち。鶴岡北高校、青森公立大学卒業後、親元で就農。山大農学部などが主となり開講する「食と農のビジネス塾」第7期生。趣味は冬の農閑期に行く旅行。家族でアランマーレ秋田庄内を応援していて、ホームゲームにはほぼ足を運ぶ。1番好きな果物はブドウ(特にピオーネ)。「作っていないけどパイナップルも好き」と小声で話す。