特集  東京オリンピック・パラリンピックが開幕します  いよいよ今月から開催される東京オリンピック・パラリンピック。 今回の特集は、鶴岡市で行われた聖火リレーの模様や、市が進めてきたホストタウンの取り組みなどを紹介します。  また、本市出身で、東京オリンピック・アーチェリー(個人・団体)日本代表の中村美樹選手に単独インタビュー。中村選手の素顔に迫ります。 ○問合せ スポーツ課☎25‐8131 東京オリンピック聖火リレー 18人のランナーが笑顔でつなぐ 6月7日、羽黒地域と鶴岡地域を会場に東京オリンピックの聖火リレーが行われました。羽黒地域では、羽黒山正善院黄金堂前から羽黒山随神門前まで1・33㎞のコースを7人のランナーがリレー。鶴岡地域では、鶴岡駅前から鶴岡公園まで2・33㎞のコースを11人のランナーがリレーしました。新型コロナウイルス感染症対策で、沿道での応援は拍手のみとなりましたが、ランナーはその拍手に応えるように手を振りながら、笑顔で聖火をつなぎました。 ▲5月15日~18日に小真木原総合体育館で聖火トーチが展示されました 村田久忠さん 渋谷真子さん サポートランナーの皆さん beyond2020 ホストタウン 東京オリンピック・パラリンピックホストタウンとして 〝オンライン〟で続けてきたモルドバ、ドイツとの交流 ホストタウンとは、東京オリンピック・パラリンピックに参加する国・地域の住民等が、スポーツ、文化、経済など様々な分野で交流する取り組みです。地域を活性化するとともに、大会後も末永く交流を続けていくことを目的としています。  鶴岡市は、ヨーロッパのモルドバ共和国とドイツ連邦共和国のホストタウンになっていますが、昨年、世界中に新型コロナウイルスの感染が広がって以降、モルドバ、ドイツ両国の選手たちが本市を訪れて直接交流する機会がなくなってしまいました。  そのような中でも、市では、インターネットで会議ができるシステムを使って「日本・モルドバリモートアーチェリー親善大会・クリニック」や「オンラインdeボッチャ」「ドイツのボッチャ選手と話そう!」など、オンラインでのイベントを開催しながら交流を続けてきました。  また、市民の皆さんに協力いただいて、両国への応援メッセージ動画を制作したり、障害のある人もない人もともに生きる〝共生社会〟への理解を深めるための「心のバリアフリー研修会」を実施したりしながら、ホストタウンとしての取り組みを進めています。  今後は、今月23日に開幕するオリンピック、そして来月8月24日に開幕するパラリンピックに向けて、新型コロナウイルス感染症対策をしっかりと行った上で、両国の事前合宿を受け入れ、代表選手の活躍をサポートしていきます。日本代表選手だけでなく、本市で合宿をするモルドバ、ドイツの選手にも注目して、ぜひ応援してください。  東京オリンピック・パラリンピックで深まったモルドバ、ドイツ両国との絆を、大会終了後もレガシー(遺産)として、大切に未来に受け継いでいきましょう。 ▲ドイツのボッチャ選手と話そう! ▲モルドバのアーチェリー選手・コーチとのオンライン交流 ▲心のバリアフリー研修会 ▲オンラインdeボッチャ ▲リモートアーチェリー親善大会 ▲応援メッセージ動画の制作 ▲アーチェリーモルドバ代表アレクサンドラ・ムルカ選手 モルドバ Moldova ドイツ Germany ○東京五輪・パラリンピック事前合宿受入れ予定 国名 競技 日程 モルドバ アーチェリー 7月5日~17日 陸上(投てき種目) 7月5日~24日 柔道 7月12日~18日 ドイツ ボッチャ 8月15日~22日 東京オリンピック・アーチェリー日本代表 中村美樹 鶴岡の人の温かさが頑張ろうという気持ちをくれる。 活躍する姿を見せることで勇気を与えられたら。 本当に運動が苦手だったんですよ(笑)。マラソン大会はいつもびりだったし、跳び箱は跳べないし、縄跳びも、あや跳びとか交差跳びがやっとできるくらいで。  アーチェリーに興味を持ったのは中学校に入学したときですね。部活動紹介で、先輩たちが風船を割るパフォーマンスを見て、「カッコイイ!」と思ったんです。それに、機械的な弓が何となく魅力的で。運動は得意ではなかったんですけど、運動部には入りたいと思っていたので、ちょっと挑戦してみようかなっていう感じでした。 ── アーチェリーの魅力はどんな所ですか?  精神状態がかなり結果に影響してくる競技なんですよね。自分の気持ちをいかにコントロールできるかが鍵で、集中できれば、「こうしたい」とイメージしたとおりの結果になりやすいんです。  だから、どんなに技術が優れているベテラン選手でも、緊張でミスをしてしまうこともあるし、逆に、始めたばかりの選手でもいい点数を出すことがある。そこは魅力の一つです。 ── 競技中、集中するためにしていることはありますか?  めりはりを大事にしています。オンとオフを使い分ける。自分が矢を放つときにはスッと気持ちを入れて、うち終わったら完全にオフにしてリラックス、そしてまた自分の番になったら一気に気持ちをオンにする。それを自然にできるように心掛けています。 ── 鶴岡に拠点を移したきっかけは何だったんですか?  気持ちの面が一番大きかったですね。 社会人3年目のときだったんですけど、ちょっとした愚痴を言える相手や、弱気になったとき話を聞いてくれる人がいなくて、気持ちがプツプツと切れてしまうときがあって。それで、鶴岡に戻りたいという気持ちになって、高校時代に指導を受けていた野崎剛先生に相談したら、「戻ってくるならいいぞ」と言ってくれたのがきっかけでした。  やっぱり鶴岡にいるからこそ、応援してくれる方をすごく身近に感じられますし、地元の人の温かさが「私、もっと頑張んなきゃ!」という気持ちにさせてくれています。 ── 矢をうつこと以外にどんなトレーニングをしているんですか?  私、正直に言って、トレーニングはあまり好きじゃないんですよね(笑)。でも、炎天下で何時間も立ちっぱなしのことがある競技なので、最近は早歩きをして、持久力を高めるための有酸素運動と下半身の筋力の強化に同時に取り組んでいます。なるべく日常生活の中でできることをトレーニングにしてますね。 ── オリンピックでは、どんな所に注目したらいいですか?  アーチェリーは見ていて分かりやすい競技です。オリンピックでは、70m先の直径122㎝の的を狙う「ターゲット」という種目のみが行われます。男女ともルールは同じで、当たった矢が的の中心に近ければ近いほど点数が高い。  テレビでは、きっと的をメインにして放送されると思うんですけど、「この選手の矢は的のここに集まっているな」とか、「こっちの選手の矢は割とバラけているな」とか、そういうところから、選手の精神状態だったり、調子だったりを想像しつつ観戦すると面白いかなと思います。  あとは風。ゴルフの打ったボールもそうですけど、矢が風の影響を受けるんですよね。選手が風とどう戦っているかも見所ですね。  今大会からオリンピックにも男女混合種目が取り入れられていて、アーチェリーもその一つなんです。弓を引く力は男女で結構差があって、男女ペアそれぞれの矢が違った軌道で飛んでいくのが分かると思います。そういったところにも注目してほしいですね。 ── アーチェリーやほかのスポーツなどを頑張っている鶴岡の子供たちに伝えたいことはありますか?  私が日頃から大切にしてるのは、何事も「楽しむ」ってことなんですよね。  小・中学生の頃って、スポーツに限らず、いろんな経験をして、自分が何をやりたいのかを考える時期だと思うんです。そういった中で「楽しい」とか「好き」と思えるもののためなら、何だってできちゃうはずなんですよね。  例えばアーチェリーだったら、点数が出ないから嫌いだと思ってしまう子って結構いると思うんです。でも逆に、「点数が出ないのは楽しんでないからかも」という考え方をしてみるとどうでしょう。自分がうまくなるために何をしたらいいのか、おのずと見えてくると思いますよ。  今、自分がやっていることを「楽しい」とか「好き」と思う気持ち、それを一番大切にしていってほしいですね。 ── 最後に、オリンピックへの意気込みをお聞かせください  中学のときからずっと夢見てきた舞台なので、やっぱり一番は楽しみたいですね。楽しんだ上で、自分の全力を発揮できれば結果は伴ってくるんじゃないかと思っています。  今、コロナ禍と言われる世の中で大変な思いをしている方々がたくさんいると思います。自分がオリンピックで活躍する姿を見せることで、少しでも勇気を与えられたらうれしいです。 なかむら・みき 1992年岐阜県生まれ、鶴岡市育ち。鶴岡三中入学を機にアーチェリーを始め、鶴岡工業高校3年時にインターハイ個人3位。 日本体育大学卒業後、㈱ハードオフコーポレーション所属。2017年世界選手権代表。2018年練習拠点を鶴岡に移す。今年3月の最終選考会で2位となり、五輪代表内定。趣味は手芸。最近は、ちりめん布を使った「つまみ細工」に挑戦している。