特集 GIGAスクール構想の現在と未来 ◎問合せ 学校教育課(櫛引庁舎)☎57‐4864 本市では、SDGs未来都市として、市民生活をより便利に、より暮らしやすくするため、総合的なデジタル化戦略の具体化に取り組んでいます。  今回の特集では、教育分野のデジタル化として、GIGAスクール構想の実現に向けた学校の取り組みを紹介します。  鶴岡市では、国の「GIGAスクール構想」に基づき、1人1台のタブレット端末を使った学習を進めています。昨年度に市内全小・中学校のネットワーク整備や充電保管庫、児童・生徒全員分の端末の配備を完了し、今年度から本格的にICTを活用した学習がスタートしました。 ICTはなぜ必要?  私たちはインターネットで調べ物をするなど、ふだんの生活の中でICTを活用しています。今後は情報収集だけでなく、情報を解析するAI(人工知能)などの先端技術を産業や社会生活に取り込むことで経済を発展させ、社会的課題を解決する時代が来ると言われています。  これからの子供たちに求められているのは、新しい時代に必要となる資質・能力を身に付け、自ら考え主体的に行動できるようになることです。その力を育むためにはICTを活用した教育が大切になっています。 3年掛けてステップアップ  市では、そのための教員のスキルアップを図るため、令和2年度は「整備・周知」、今年度は「吸収・使用」、最終年度である4年度は「活用・発信」をテーマに位置付け、3年を掛けて基本から応用へと、ステップアップしていくよう研修等を実施しています。  特に最終年度は、教員が自分の実践を発信し、共有することを目指しています。それによって、ICTを活用した授業の質の向上が期待でき、市内の学校全体の底上げにつながります。多様な子供たちを誰1人取り残すことなく、学びを深められると考えています。 タブレットは新しい文房具  タブレット端末は、鉛筆やノートと並ぶ新しい文房具として1人に1台配備しました。ICTは使うことが目的ではなく、手段の一つです。教育の本質は変わらず、ICTを効果的に使うことで、「主体的になる」「対話が増える」「学びが深まる」ことが期待されています。  子供たちに身に付けてほしい能力によって、ICTの活用とこれまでの鉛筆で書くという学習の使い分けが重要になってきます。 学校だけでなく自宅でも活用  1人に1台貸与することで、学校に限らず、自宅に持ち帰って使用することもできるようになります。これにより、新型コロナや自然災害などでの臨時休業の際にも、子供たちの学びを止めないことが可能になります。また、入院など様々な理由で通学が困難になった子供の学習機会も確保することができます。  自宅への持ち帰りは体制が整った学校から順次始まっています。週末などにタブレットを使った宿題を出している学校もあり、今後家庭での活用の幅を広げていく予定です。また、通信環境も含め、自宅で使用することへの不安を感じている家庭にも対応するための支援も同時に行っていきます。 ICTで学びが変わる  時代の変化に対応していくためには、教育も先を見通し変わっていく必要があります。これまでの教育に、ICT教育をバランスよく組み合わせて、グローバル社会を生き抜く力を育み、子供たちの可能性を広げていけるよう、継続して支援していきます。 GIGAスクール構想とは? 1人1台のタブレット端末と、高速大容量の通信ネットワーク環境を一体的に整備することで、一人ひとりの学習状況に応じた教育の実現を目指す文部科学省の構想 ICTとは? Information and Communication Technologyインフォメーション コミュニケーション テクノロジー の略で、パソコンやスマートフォン、タブレットなどを活用した情報処理や通信技術のこと 学校ではどのように使っているの?  ICTを活用した教育が導入された今、授業風景はどのように変わったのでしょうか。学校や学年によって使う頻度に差はありますが、タブレットの活用方法は様々。各学校では、その利点を生かし、より効果的な授業になるよう取り組んでいます。どのように利用されているか、朝暘一小、羽黒小、朝日中の例を紹介します 朝暘一小の取り組み ―1年生・2年生(小学校低学年) 1年生は図工の授業です。この日は、ペットボトルのキャップを並べたり、重ねたりして、自分の好きな形を作ります。自分の作品をタブレットで写真に撮って、デジタル上のノートで作品カードを作ります。 まずは充電保管庫から1人ひとりが持っていきます タブレットのカメラ機能で自分の作品をカシャッ 写真を入れた作品カードを見せ合います 2年生は算数の授業です。はじめにデジタル上のノートを使いビンゴをしました。その後、ドットの数について、複数の計算式を使って答えを導き出すよう、自分で計算方法を考えます。最後にみんなの前で自分の考えをタブレットとモニターで説明します。 ビンゴの様子。先生が出したかけ算の答えと同じ数字が出たら当たり! ドットの数を出すための計算方法を印を付けながら説明しています 朝暘一小1年  山口 美青やまぐちみさお さん 授業で写真を撮るのが楽しいです 朝暘一小2年  五十嵐 大智いがらしたいち さん 使い方がちょっと難しいところもあるけど、授業が分かりやすくなった それぞれの子供が持つ多様な力が引き出されるツールとして期待 朝暘一小  校長 鈴木 郁生 先生  昨年の4月からタブレットを取り入れた授業を行っていて、子供たちの能力を最大限引き出すための活用法を探りながら各教員が実践しています。学年や教科によって活用方法は違いますが、教員同士アイデアを出し合って、学校全体でICT教育の底上げを図っています。  タブレットの利点は、子供たちの学習の成果だけでなく、その過程が記録で分かることですね。それが可能になったことで、教員の負担が減ると同時に、学習状況の理解がより深くなったと感じます。  子供たちはタブレットを使った学習をとても前向きに捉えています。様々な使い方があるので、その可能性の広がりを面白いと感じ、自分なりに学習に活用しようとしている子供もいます。今後そのような子供が増えていってほしいですね。  本校では、家庭と一体となってICT教育に取り組んでいく目的から、子供が週末に端末を持ち帰っています。使い方のルール作りとともに、親子で会話しながら有効的な活用方法を一緒に考えていただけたらと思っています。 羽黒小の取り組み ―5年生・6年生(小学校高学年) 5年生は英語の授業です。自分の行きたい国を英語で紹介するため、その国のことをタブレットで検索します。国旗や見たい景色、食べたい物などを自分のスライドに貼り付け、プリントアウト。その紙に英語の文を書き足し、作品の完成です。 インターネットで行きたい国のことを調べます 全てのタブレットをプリンターにつなぐことができます 6年生は英語の授業です。自分にとっての小学校生活の一番の思い出を分かりやすく伝えるために、プレゼンテーションソフトでスライドを作り、発表します。この翌週に発表の本番を控え、グループで紹介し合って、意見をもらいます。 グループで発表し合い、良いところや改善点を出し合います グループ学習の後、みんなの前で発表する練習をしました 羽黒小5年  山中 陽向やまなかひなた さん 朝学習でも使っています。鉛筆で字を書かないで、タイピングでやるのも楽しいです 羽黒小6年  今井 爽羽いまいさわ さん 言葉だけでは表現しきれない場面も、イラストなどのデザインを取り入れながら分かりやすく表せるので、とても便利です 子供の力を伸ばす仕組み作りが大切 羽黒小 本間 歌 先生 伸ばしたいと思っている力を重点的に育成できるのがタブレットの強みだと思います。これまで人前で話すことが苦手だった子も、タブレットを使うことで新しい自分への気付きがあったり、伝えたいことが膨らんできたりして、自己表現ができるようになってきています。コミュニケーション能力の育成にもつながっていると感じています。 朝日中の取り組み ―3年生・全体(中学校) 年生の2時間目は理科の授業です。太陽の1日の動きについてモデル実験を行い、その結果をタブレットを使いまとめます。実験の結果を写真で記録し、分かったことや考察を入力して、レポート形式で提出します。授業の前半は、グループで実験を行い、確認しながら作業を進め、後半は、個人でタブレットに整理します。 実験した結果を写真に収めます。写真を撮ることで考えを深めることに時間を使えます 撮った写真も見ながら、実験結果について記録し、個人で考察をまとめます 3時間目は社会の授業です。経済分野の学習で、価格の変化が持つ意味について学びます。授業の前半は、プリントを使って確認したり、互いに教え合ったりして、後半はタブレットで自分の考えをまとめます。 授業で学んだことを基に、インターネット検索も活用し、自分の考えを発展させます 課題を提出するとモニターに映すことができ、効率よく確認することができます 全校生徒を対象に「情報モラル講話」を実施しました  全校生徒が体育館に机と椅子を持ち込んでの講話。タブレットで講師の質問に回答したり、最後の振り返りを行ったりしました。  自分の意見がスクリーンに映ったり、講師に取り上げてもらったりすることで、より主体的に参加することができました。 生徒会活動にもお役立ち 生徒会で全校生徒にアンケートをするときにも、タブレットだと回答も集計も時間が掛からずでき、結果もすぐに知らせることができるので、とても便利です 朝日中3年(生徒会長) 佐藤 大和さとうやまと さん ご家庭のインターネット環境の整備を支援します  1人1台タブレット端末を家庭で使うため、市ではインターネット環境のない家庭を支援しています。詳しくは各学校にお問い合わせください。 【支援内容】 ①モバイルWi-Fiルータの貸出し  ●対象 インターネット環境のない家庭  ※通信費の契約・支払いは、原則各家庭で対応。 ②SIMカードの貸出し(通信費の補助 ①とセットで貸し出します)  ●対象 インターネット環境のない要保護・準要保護世帯  ※学校で貸与したタブレット端末のみつながる設定になっています。