つるおかの医療が変わる 国立がん研究センター東病院×荘内病院の挑戦 荘内病院は令和2年7月に、がん治療の高度化を図るため、国内トップレベルのがん専門病院である国立がん研究センター東病院(千葉県柏市、以下東病院)と医療連携に関する協定を締結しました。  東病院からの支援を受け、市民の皆さんが地元にいながら最新のがん治療を受けることができるよう取り組みを進めています。 〇問合せ 荘内病院総務課☎26-5111(代表) 連携に至るまで  平成29年4月、国立がん研究センターは、慶應義塾、山形県、鶴岡市と連携協定を締結し、先端研究産業支援センター内に鶴岡連携研究拠点がんメタボロミクス研究室を開設。慶應先端研と共同でがんの診断薬などの研究を進め、さらに、荘内病院と東病院の医療連携により、がん治療の高度化を推進しています。  令和3年4月には、4者による連携協定の第2期プロジェクトがスタートし、荘内病院と東病院の医療連携は「がん地域医療モデル」構築を目指すプロジェクトに位置付けられています。 がん相談外来の開設  令和2年11月、荘内病院に「がん相談外来」を開設しました。東病院の専門医が毎月1回来院し、診療を行っています。これによって、遠方の専門病院に行かなくても、主治医以外の医師に意見を聞くセカンドオピニオンを受けることができるようになりました。  また、小児がんや、り患率が低い希少がんなどの難治がん患者が、専門性の高い治療を受けることができます。  特別な治療が必要な場合は、東病院の受診を勧める場合もあります。 電子カルテの共有開始  令和3年10月に、荘内病院の電子カルテやCTなどの各種画像を、適正な管理の下、東病院でも閲覧できる環境を整備しました。  これにより、診療情報を即時に共有することができ、東病院の専門スタッフが相談に応じたり、東病院で治療を受けた患者のその後の治療や生活をサポートしたりできる体制が整いました。 遠隔診療システム導入の実証研究  現在、東病院の専門医が、テレビ会議システムを使って荘内病院にいる患者を診察する遠隔診療や、モニター越しに荘内病院での手術を支援する遠隔手術サポートシステムの導入を計画しており、令和4年度中の実現を目指しています。  これにより、鶴岡に住みながらがん専門医の診療を受けられるなど、市民の皆さんの利便性が向上するとともに、遠隔手術サポートシステムの導入が、荘内病院の若手外科系医師のレベルアップに大いに役立つと考えられます。 職員の交流  荘内病院の医療スタッフが、東病院の専門医が講師を務める研修会等に参加するなど、職員のがん医療・看護のスキルアップを図っています。  荘内病院では、今後も東病院との医療連携を進め、がん診療の高度化を図り、市民の皆さんが良質で、安全・安心な医療を身近で受けられる環境作りに取り組んでいきます。 医療連携で目指す将来のがん医療 がん医療の高度化 荘内病院 鶴岡に住みながらより高度ながん医療が受けられる 遠隔診療 荘内病院   東病院 新しいがん医療モデルの構築 東病院 国内最先端のがん地域医療モデルを構築 がん相談外来担当医師 全田貞幹先生インタビュー  患者さんの理解を深め負担は最小限に  医師にがんであることを告げられると、患者さんはかなり大きな衝撃を受けます。続けて病状などの説明を受けても、後半は覚えていないということがよくあります。1回で分からなかったことは2回・3回と聞けばいいのですが、主治医の先生に気を遣い遠慮してしまったり、何が分からないのか分からなくなってしまったりする患者さんがたくさんいらっしゃいます。  がん相談外来でやりたいことは、主治医の治療方針とは違う意見をお伝えするということではありません。まずは、主治医が話したことのおさらいが最低限やりたいこと。話すことが主治医と同じでも、時と場所が変わると理解が深まることがあるんです。  病状や治療方針の次は、仕事や自宅の環境など、生活に関することです。がんと診断されて、すぐにそこまで思い至る人は少ないので、私が聞いていくんです。そして、それは治療している病院の方がよく分かることなので、主治医や看護師に相談するようお伝えします。  がん相談外来を受けることで、主治医との関係が崩れるということはありません。主治医の治療方針について、私からも説明することで、むしろ主治医への信頼が高まることがほとんどです。  一般的にセカンドオピニオンには医療保険が適用されませんが、がん相談外来は再診料のみで受診できます。  中には東病院での治療を提案して、手術を受けた方もいますが、術後は鶴岡に戻り荘内病院に通院しています。荘内病院がしっかりフォローすることで、何度も東病院に行く必要がなく、金銭的にも身体的にも負担を最小限にすることができるんです。 鶴岡から日本の医療を変える  今後、テレビ会議システムを使った遠隔診療や、荘内病院でのがん手術をモニターを通して支援するシステムの導入について実証研究を進める予定です。  この遠隔手術サポートシステムで目指していることの一つは、若い医師の育成です。今は、地元や近隣にある医学部を卒業しても、手術について学ぶため東京などの病院に行き、そのまま戻ってこないということが少なくありません。しかし、荘内病院で国立がん研究センターの技術を学ぶことができれば、若い優秀な医師が庄内に残るようになります。そうすると5年後、10年後の地域の医療レベルが格段に上がり、日々の診療で、鶴岡の皆さんに医療連携の成果を還元できるようになります。  また、荘内病院で新しい医療モデルを作ることができれば、これをほかの病院でも展開することができます。鶴岡をスタートにして、日本のがん医療を変えていくことがゴールだと考えて取り組んでいます。 がん相談外来  がんやその治療について不安に思っていること、よく知りたいことなどを、東病院の専門医に直接相談できる外来診療です。  遠方の専門病院に行かなくても、荘内病院内でセカンドオピニオンを受けることができます。 場所 荘内病院 診察日 毎月第1金曜日(変更になる場合あり) 面談時間 30分~60分 担当医師   国立がん研究センター東病院 全田 貞幹 医師 受診料  再診料のみ。保険外の費用は掛かりません 相談できること   ・治療の方針について悩んでいること  ・治療の副作用に関すること  ・治療は終わっているが生活する上で困っている副作用のこと など  ※主治医も同席することができます。 相談できる方  荘内病院に通院しているがん患者とその家族  ※がん患者だけではなく家族全体に対する相談です。患者1人での受診は原則できません。  ※他院からの紹介で受診することもできます。その場合は、1度、荘内病院の外来を受診していただきます。 受診方法  ・荘内病院に通院中の方    主治医に相談  ・他院に通院中の方    荘内病院地域医療連携室☎26-5155に相談