特集 地域と医療をつなぐ荘内病院 約14万9,000人が暮らす庄内南部を主な診療圏域とする荘内病院。地域の中核病院として、他の医療機関と連携しながら、高度かつ良質な医療の提供と心のこもった患者サービスに努めています。今回の特集は、荘内病院が提供する周産期医療や、地域の皆さんと医療とをつなぐ取り組みを、同院の医師や看護師にお話を聞きながら紹介します。◆問合せ?荘内病院総務課?26‐5111 荘内病院のシンボルマーク「ヒポクラテスの木の葉」 クローズアップ CLOSE - UP 01 赤ちゃんとお母さんの健康を守ります 庄内地域唯一の周産期母子医療センター 専門医や看護師がチームとなって新生児医療に向かっています 地域周産期母子医療センター NICUセンター長  吉田 宏(よしだひろし)  周産期母子医療センターは、出産前後の時期に関する高度な医療を提供するために、産科と新生児科が組み合わされた施設です。  山形県内には周産期母子医療センターが4つありますが、庄内でこの機能を備えているのは荘内病院だけで、残りの3つは山形市にあります。平成22年には「山形県地域周産期母子医療センター」に認定されました。  センターの中には、低体重や疾患のある赤ちゃんを集中的に治療する新生児集中治療管理室(NICU)が6床と、急性期を乗り越えた赤ちゃんをケアする新生児回復治療室(GCU)が6床あり、庄内全域から未熟児が生まれそうなお母さんや、緊急的に治療が必要な赤ちゃんを受け入れています。  荘内病院には、私を含め、8人の小児科医がいます。NICUを運営するには、24時間365日、小児科医が院内に常駐している必要があります。荘内病院では、年間250例ほどの分娩があり、帝王切開を含めると150人ほどがNICUに入りますから、多くの小児科医が必要なんです。  小さく生まれるなどしてNICUに入る赤ちゃんは、とても長い時間を病院で過ごします。その分、私たち医師や看護師も、赤ちゃんやご家族と接する時間が長くなります。赤ちゃんが段々大きく、健やかに育って、家族と一緒に元気に退院していく姿を見るのが、一番の生きがいですね。 NICUとGCUでは私たち小児科医と看護師が24時間赤ちゃんを見守っています! 生まれてきた赤ちゃんとご家族のための優しいケア 地域周産期母子医療センター 新生児集中ケア認定看護師  和田 美枝(わだみえ)  現在、NICUには15人、GCUには8人の看護師がいます。NICUには、小さく生まれてきたり、緊急の治療が必要だったりする赤ちゃんが入ります。私たち看護師は、ファミリーセンタードケア≠ニ言って、赤ちゃんとご家族が中心の優しいケアができるように心掛けています。生まれてきた赤ちゃんと、お母さんやお父さんが家族になっていくためのお手伝いですよね。赤ちゃんが無事に退院できたときがゴールではなく、そこからが新しい生活のスタートなんです。  NICU・GCUを巣立っていく赤ちゃんの中には、退院後も医療的ケアが必要なお子さんもいます。訪問看護師さんや地域の保健師さんなどと連携しケアをしていきますが、どうしても家庭でのお母さんの負担が大きくなる傾向にあります。  今、そういった家庭を支援する事業が少しずつ増えてはいるものの、まだ十分とは言えない状況です。  支援を必要とするお母さんが、安心して在宅で育児ができるような、社会的な取り組みが、今後、更に重要になってくるのではないでしょうか。地域の中に支援の輪が広がっていくことを、心から願っています。 ▲NICU内の様子。NICUに6床・GCUに6床を備え、新生児医療を行う ▲退院後の生活に向けて、親子同室で過ごせるファミリールームが備えられている クローズアップ CLOSE - UP 02 高校生のための医療体験プログラムオープンホスピタル 将来の医療人材の育成にも取り組んでいます  オープンホスピタルは、医師・薬剤師を目指す市内の高校生を対象に、平成23年に始まりました。  医療現場での模擬体験を通して、医療の道への志を高めてもらうために実施しています。  新型コロナウイルス感染症の影響で3年振りの開催となった今年は、医師志望5人、薬剤師志望5人が参加しました。  医師コースでは、内視鏡による模擬検査や電気・超音波メスなどを体験。薬剤師コースでは注射薬調製や患者との模擬面談などを体験しました。  荘内病院では、未来の優れた医師・薬剤師の育成にも積極的に取り組んでいます。  私も高校生のときに参加しました! 荘内病院臨床研修医 五十嵐 愛(いがらしあい) 今年から研修医として働いています。いろんな科で研修をしながら、患者さんに寄り添える医師になれるよう頑張っています!オープンホスピタルでは、内視鏡など専門的な体験ができるので、将来、医療の道を志す高校生の皆さんにはお勧めですよ! ▲注射模擬体験。血管位置を確認し慎重に針を刺す ▲消化管を再現した模型に本物の内視鏡を入れる ▲電気・超音波メスで実際に鶏肉を切ってみる ▲注射薬の物理的・化学的特性を学び、実際に配合 ▲模擬面談。患者とのコミュニケーションも大切 ▲手術室見学。手術器具に実際に触れてみる 参加者の声 羽黒高校1年 佐藤 仁教(さとうよしなり)さん 将来、医師になりたいと思っています。胃と腸の内視鏡などを体験しましたが、思い通りに操作できなくて驚きました。医療現場を実際に見て、良い刺激になりましたし、とても有意義な時間でした。 クローズアップ CLOSE - UP 03 医師が地域に出張します ドクター出前講座 荘内病院院長 鈴木 聡(すずきさとし) 地域医療を一緒に考える場として  ドクター出前講座は、院長の私や当院の研修医が、皆さんがお住まいの地域に伺って実施しています。がんについての講話や、地域の皆さんに出演していただく寸劇、車座トークなどを行いながら、参加した方の生の声を聞き、地域医療を一緒に考えていく機会になればと思っています。  また、地域の皆さんと直接お話ができるため、当院の研修医の成長の場にもなっています。  今後は、研修医だけではなく、各診療科の医師にも参加してもらい、皆さんと交流できる場にしていきたいと考えています。開催を希望する団体の皆さん、ぜひお声掛けください。 私たち荘内病院の医師が皆さんの地域に伺います! ドクター出前講座の開催希望などお問合せはこちら 荘内病院地域医療連携室 TEL:26‐5155 FAX:26‐5156 ▲院長によるがん予防講話(小堅地区) ▲寸劇の様子。住民が患者役を演じ、研修医が診察する(藤の花地区) ▲車座トーク。体の心配事など、住民の質問に医師が答える(藤の花地区) 参加者の声 小堅地区自治振興会長 本間 仁一(ほんまにいち)さん 私は、以前手術をしたことがあります。今回の講話を聞いて、早期にがんを発見することの重要性を改めて認識しました。出前講座はためになる話が盛りだくさんなので、多くの市民の方に聞いてもらいたいですね。 市民の皆さんに寄り添う病院として  医療を取り巻く環境は刻一刻と変化し、これまで以上に効率的・効果的な病院運営が求められている今、荘内病院では、患者サービスの向上や業務の効率化を図るため、様々な取り組みを進めているところです。 ★診察順番案内システム  外来の診察状況を病院ホームページでお知らせし、患者さんが診察までの待ち時間を有効に活用できるようにします。 ★料金後払いシステム  事前に登録した方は、医療費が後日クレジットカード決済されますので、会計の待ち時間がなくなります。 診察順番案内システムと料金後払いシステムは、今年度中に導入予定です。 ★国立がん研究センター 東病院との連携を強化  東病院の全田貞幹医師が担当している荘内病院の「がん相談外来」でのオンライン診療システムによる遠隔診療や、遠隔サポートシステムを利用した手術を今年度中に開始できるように準備を進めています。  荘内病院は、今後も市民の皆さんに寄り添う病院として、その歩みを進めていきます。