人の情景(ひとのじょうけい) scene02 安藤北斗 Hokuto Ando 見る人が共感≠キるデザインの追求  デザイナーとして幅広い領域で活躍をしている安藤北斗さん。今秋には、テキスタイルデザイナーの須藤玲子氏と、自身が所属するコンテンポラリーデザインスタジオ「we+」による鶴岡シルクの特別企画展?「ファンファーレ?扇の舞〜NUNOとwe+によるテキスタイルインスタレーション」を鶴岡アートフォーラムで開催しました。藍色を基調とした様々なデザインの扇が揺らめく様子に、訪れた多くの人々が魅了されました。  「高校の美術部の先生が、美術準備室に様々な芸術家の作品集を飾るなどして自分のアトリエにしていたんですが、そこに何となく興味を持って出入りし本を読んだのが、最初にデザインを認識したきっかけですね」。  2013年には林登志也氏と共同でwe+を設立。活動のスタンスは、一つの媒体に特化せずに様々な分野に表現の幅を広げていく越境型のデザイナー≠ナあること。空間だけでなく物もデザインし、大学と共同で海洋の利活用に関する論文を発表したこともあります。  「空間はあくまで一つのツールで、見てドキドキ、ワクワクするような場を作りたいとずっと思っていました。作品を理解してもらうには共感が重要だと思うんです。落ち葉が風に舞うなどの誰もが見たことのある自然の現象や原体験が重なるとき、そこに共感が生まれるのではないでしょうか」。故郷・鶴岡の自然も作品を生み出す原動力になっているのか尋ねると、「意識している感覚はほとんどないですね。でも、鶴岡で生まれ育った経験が無意識に擦り込まれているんだと思います。夜に家から少し歩いた先の田んぼを散歩して水面に映った星空を眺めたり、海まで自転車で行って冷たい海の中に飛び込んだりしたことが印象に残っていますが、もし、東京で生まれ育っていたら、自然を活用して作品を生み出すこともなかった気がするんですよね。」と話します。  今回の特別企画展が鶴岡での初仕事となった安藤さん。  「鶴岡は面白い素材やコンテンツが転がっていて、クリエイティブなことに挑戦できる可能性のある場所だと思っていますし、自分のデザインなどを生かしていきたいです。」と、故郷での活動にも意欲を見せます。  休日の過ごし方を聞くと、「鎌倉の竹林の中にある自宅の整備をしたり、家に入ってきたムカデを退治したり、なんだかんだ自然と戯れています」と笑います。  “自然への共感力からデザインを生み出したい”。その思いを柱に据え、安藤さんの挑戦の場は枠にとどまることなく、広がり続けています。 ▲「we+」共同設立者の林登志也氏(右)とは大学生のときに知り合った。 ▲扇が揺らめく演出は、庄内平野の稲が風になびく光景から着想を得た。 ▲直径2mの扇を設営。空間に華やかさが増していく。 安藤北斗 さん(40) 鶴岡市出身。鶴岡南高校を卒業後、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科に入学。その後、セントラルセントマーティンズ(ロンドン)に留学。2013年には林登志也氏と共同でコンテンポラリーデザインスタジオ「we+」を設立。空間デザインやプロジェクトのコンセプト開発など多岐にわたって活躍し、日本空間デザイン賞金賞など多数のデザイン賞を受賞している。