人の情景(ひとのじょうけい) scene03 鎌田邦裕 Kunihiro Kamata 誰もが楽しめる音楽を故郷に向けて吹き続ける フルート演奏家として、京都と故郷の鶴岡を拠点に活動中の鎌田邦裕さん。国内で最も長い歴史を持ち、若手音楽家の登竜門でもある日本音楽コンクールのフルート部門で第2位に輝きました。  「最初はピアノを習っていましたが、小学3年生で母が練習していたフルートを始めました。小・中学校では吹奏楽クラブに、高校では吹奏楽研究会に所属しながら、個別のレッスンも続けていました。音楽家になろうと決めたのは、高校3年生に進級するときでしたね」。  そんな中、管楽器の命とも言える音色≠フすばらしい指導者と出会い、「この先生なら自分に足りないものを学べる。」と京都市芸大への進学を決意。指導を通じて、輝かしく重厚な音色が身に付いたと話します。  卒業後も演奏活動を続け、年齢制限の29歳で初めて挑戦した昨年の日本音楽コンクールでは、第2位に加えて、観客の投票で選ばれる岩谷賞(聴衆賞)を受賞。これまでのリサイタル経験が生きたと振り返ります。  「どんな舞台でも、お客様を巻き込むパフォーマンスがしたいんです。 そのためにも、曲目を解説する時間を作るなど、初めてフルートやクラシック音楽に触れる方にも楽しんでもらえるよう、心掛けています」。  得意のトークを生かし、音楽になじみのない人へも楽しさを伝えるのが鎌田さんのリサイタルの特色です。  また、演奏家だけでなく、指導者としての顔も持つ鎌田さん。これまで中高生への指導を続けてきた中で、発信する大切さを再認識したそう。  「今の中高生は、自分の意見を表に出すことがすごく苦手になっていると感じます。自分の可能性を信じて努力し、声を上げれば、誰かが気付いて道をつなげてくれる。臆せずチャレンジしてほしいです。また自分が高校生のとき、音楽を学べる場所の少なさが悩みでした。全国の同じ境遇の人たちへ、飛躍するチャンスを作るお手伝いをしたい。」と、後に続く若手の育成にも意欲を見せます。  鎌田さんはこれまで、庄内での演奏会を9年間続けてきました。応援してくれた方々への恩返しの気持ちだけでなく、聴き手の感性を豊かにし、更に地元の音楽家を育てていく文化の地産地消≠ノ携わりたいとの想いを強く持っているそうです。  「音楽に触れている間は自分の心と向き合えます。プロに限らず、一生懸命奏でた音楽には人の心を震わせる力が絶対にあります。自分の演奏が、庄内の音楽の土壌作りに、そして種まきになるとうれしいですね」。  職業音楽家としての使命感を熱く語る鎌田さん。故郷に、そして未来に、その笛の音が響いています。 写真 ▲日本音楽コンクール本選。東京オペラシティコンサートホールでダイナミックな演奏を披露した。(提供:毎日新聞社) ▲小学校5年生の夏休み、レッスン中の一コマ。真剣な表情がうかがえる。 山形開催第10回記念公演 鎌田邦裕 フルートリサイタル〜笛吹絵巻〜 3月18日土曜日 響ホール(庄内町) 午後1時40分 プレトーク開催 午後2時    開演 ◆チケット料金 一般3,000円・学生1,000円(いずれも前売り。当日500円増し)/ ペア5,000円(前売りのみ) ◆チケット販売 公式ホームページ、響ホール?0234‐45‐1433、鶴岡楽器?22‐1310、ローソンチケット(Lコード:35672) 鎌田邦裕 さん(29) 鶴岡市出身。鶴岡南高校を卒業後、京都市立芸術大学音楽学部へ入学。同大大学院音楽研究科修了。 昨年の第91回日本音楽コンクールフルート部門で第2位及び岩谷賞(聴衆賞)を受賞。2021年・2022年には京都・東京・鶴岡でソロリサイタルツアーを開催。趣味は家庭料理。京都生活の中でも「はえぬき」を食べ続ける庄内米ファンでもある。