地域の魅力を後押し! 生きる力を育む教育 人(ひと)の情景(じょうけい) scene 07 鈴木けい Kei Suzuki  温海地域で進めている「生きる力を育む」教育※。羽黒地域出身の鈴木けいさんは、今年5月から地域おこし協力隊として、温海地域の中学生の学習環境を充実させる事業などに携わっています。  「京都の大学に進学し、ボランティア活動をしてみようと、青少年活動センターという施設に行ってみたんです。そこで出会った職員さんにきっかけをもらい、施設の情報紙を作るボランティアを始めました」。  大学卒業後は行政職に就きましたが、青少年育成について深く学びたいと思い、大学時代にボランティア活動をしていた法人に転職。そこでは、若者の自己実現や自主活動をサポートし、一緒に考えるユースワーカー?として活動していました。施設に相談に来る若者たちの喜びや悩みを分かち合うよう心掛けていたそうです。  「広報物を作ったときに、協力してくれた高校生の1人が『デザインに興味はあるけどやったことないし……』と自信なさそうにしていました。ところが、デザインの本で自ら勉強を始め、学校でも文化祭のチラシを作るなど、いろいろと挑戦するようになったんです。若者が成長する瞬間を見たことで、体験する機会や場の重要性を感じました。」と話します。  鶴岡に戻ってきた理由を尋ねると、「成人式の祝辞で、中学生のときの校長先生が『30歳までは今いる所で頑張れ。30歳になったら戻ってきて、地元に貢献できるようになりなさい』とおっしゃっていたんです。この言葉が頭に残っていたので、経験を積んで、いずれ帰ろうと思っていました。また、青少年育成の仕事を通じて、若者の可能性が無限大だと感じるようになったことと、地方の人口減少が進む中、鶴岡の未来を明るくするような活動ができないかと考えていたところで、協力隊の募集が! 全てのタイミングが合った気がしましたね。」と、はにかんで答えてくれました。  鈴木さんの目標の一つは、若者が関わる場?を温海地域に作ること。「温海で取り組むSEL※での学びが生かされるような場や、中高生をはじめ、若者が興味を持って活動できる場を地域の中に作りたいんです」。一緒に地域づくりに取り組む人材が育ってほしい、と夢を語ります。  「子供たちには、様々な経験や人との出会いを通して、自分たちの暮らす地域の魅力を知り尽くしてほしいです。進学などで地元を離れても、その魅力が『戻ってこよう』と思えるきっかけになるはずですから」。  場づくりは土づくり。これからの温海の、そして鶴岡の未来を担う人材の種をまく活動がスタートします。 ▲前職では、青少年と一緒に演劇やダンスの舞台を一から作り、公演までサポートする経験も。 ▲現在は温海生涯学習振興会に勤務。小・中学校の先生や市職員と一緒に、SEL教育の研修会を受講した。 ※「生きる力を育む」教育とは 令和2年から温海地域で進めている教育の方針。SEL(社会性と豊かな感情を育てる教育)を通じて、EQ(非認知能力:こころの知能指数)を高め、子供たちが豊かに成長し、社会で生き抜く力を育てることを重視している。地域の保育園と小・中学校が連携して実践中。 地域の保育園合同の環境教育「福栄の日」など、特色ある教育を実施。 SEL:Social-Emotional Learning EQ:Emotional Intelligence Quotient インスタグラムで情報発信中! 鈴木(すずき)けい さん(32) 鶴岡市羽黒町出身。鶴岡北高校を卒業後、京都女子大学教育学部へ進学。卒業後、自治体職員を経て、京都市ユースサービス協会に勤務。令和5年5月に地域おこし協力隊として温海地域にUターン移住。趣味は山歩き、ピアノ。山育ちのため、温海暮らしでは海に沈む夕陽が新鮮で、気分が乗ってくると鍵盤を叩いているという。