『雪間草』『花のあと』(文春文庫)所収
<作品を読んでみての感想>藩主の側室から尼となったが、昔の許嫁の窮地を藩主にかけ合って救う話で、主人公の松江の尼となりながらも、昔の許嫁のために一人身で向かう強さが印象的だった。
<作品制作に込めた思い>題名にあるとおり、春の訪れを実感させる、やわらかい印象と、藩主のもとへ、一人で向かうという強い印象を、線の鋭さとにじみで表現し、工夫して制作した。
『三年目』『神隠し』(新潮文庫)所収
<作品を読んでみての感想>十七のときから三年間一途に待った女のもとに男が帰ってきた。しかし、男は女にもう三年待ってくれという。待つか、それぞれとも男を追うか。女の人生の選択が描かれた物語。
<作品制作に込めた思い>六年間男を待つと決めた意志の強さと恋する女の柔らかさが伝わるように書きました。
「狐の足あと」『春秋山伏記』(新潮文庫/角川文庫)
<作品を読んでみての感想>「狐の足あと」という題名から、あたたかい話だと思っていたが、貧しい生活だったり、噂まみれの村での暮らしの内容で、暗く、生きづらい世界が描かれていると感じた。
<作品制作に込めた思い>自分の思いどおりの生活をおくれず、自由ではないという内容から、硬い感じで文字の自由さを減らしてみた。また、溟い印象をうすい色で表現した。
『空蝉の女』『無用の隠密』(文春文庫)所収
<作品を読んでみての感想>二人の子供を亡くし、夫には好きな人ができてこの先、何の楽しみもなくしてしまった「お幸」に明るい兆しが芽生えるといいなと感じた。
<作品制作に込めた思い>暗闇の中にいるお幸に、希望の光が差すように勢いをつけて力強く表現した。
『春の雪』『長門守の陰謀』(文春文庫/講談社文庫)所収
<作品を読んでみての感想>一途な愛を貫く男とその愛に対し答えることはできなくても、誠意を表したいと思う女。自分の気持ちに正直で心の強さを感じました。
<作品制作に込めた思い>真っ直ぐな変わらない思いを感じ太さで書き表し、女性らしさをやわらかい字体で書き表しました。
『泣く母』『霜の朝』(新潮文庫)所収
<作品を読んでみての感想>15歳で同い歳だけど、母に悲しい思いをさせたくないという小四郎の気持ちから頼もしさを感じました。
<作品制作に込めた思い>小四郎の、母に悲しい思いをさせたくなかったと伝えたい思いが言葉にならないもどかしさと泣く母の思いを、ふんわりとでもさびしさを感じる様なタッチにしてみました。
『雪明かり』『雪明かり』(講談社文庫)所収、『時雨のあと』(新潮文庫)所収
<作品を読んでみての感想>雪の中を一人歩いていた菊四郎は久々に妹由乃に再会する。風の便りで由乃の病気を知るも全く合わせてくれない夫から何とか取り戻そうとする家族のきずなが感じられた。
<作品制作に込めた思い>雪のぼんやりした感じと、菊四郎と由乃の二人の会話のあたたかく柔らかい感じを表現しました。
『疑惑』『花のあと』(文春文庫)所収
<作品を読んでみての感想>蠟燭問屋の主人が殺され、女房のおるいも縛られた事件。殺しと縛りがたくさんできて苦しい感じが伝わり、心が落ち着かない感じがしました。
<作品制作に込めた思い>題名である「疑惑」という言葉をぼんやりと、人々の争いの場面を強く鋭さを意識して書きました。
『橋ものがたり』(文春文庫)
<作品を読んでみての感想>どの短編もほろ苦い恋のお話で、最初の「約束」では、今の時代では考えられないできごとの連続で、昔の貧しかった女性にとって厳しい時代だったことが痛切に感じられた。
<作品制作に込めた思い>どの短編にも共通する、人に恋い焦がれる思い、様子を淡い表現で、その思いの大きさ、強さを線の太さで表現した。
『時雨のあと』『時雨のあと』(新潮文庫)所収
<作品を読んでみての感想>この作品では、主人公が過去の思い出や愛情に影響されて成長していく物語が描かれています。読んでみて、人とのつながりを深めることで自身の成長につながるのだと感じました。
<作品制作に込めた思い>私は、主人公が愛する人を失っていく切なさ、過去の思い出が主人公に与える希望を感じたので、愛情、切なさなどをイメージして墨を薄くし、小さめに書いて制作しました。
『花のあと』『花のあと』(文春文庫)所収
<作品を読んでみての感想>武家の娘以登が叶わない恋と剣士孫四郎の死を受け入れ儚さを胸に、強く生きる物語。好きな人が亡くなってしまうのが辛かった。
<作品制作に込めた思い>この話は、復讐や人間関係の葛藤が書かれているため、人の心情が伝わりやすいように、繊細に表現したい。
『霧の壁』『無用の隠密 未刊行初期短篇』(文春文庫)所収
<作品を読んでみての感想>主人公が表では何の役にも立たない存在とされながら、様々な陰謀や人間関係に巻き込まれていく物語です。
<作品制作に込めた思い>人間の闇や悪を霧という言葉でモヤモヤとした感じを表しながら壁という言葉で強く表現しました。
『暗黒剣千鳥』『隠し剣秋風抄』(文春文庫)所収
<作品を読んでみての感想>ある秘密を固く守っている5人の仲間が次々と殺され、一番疑いたくない家老が犯人ではないかと思い始めたところから、確信するまでの複雑な思いが何とも切ないと感じました。
<作品制作に込めた思い>するどい刀をイメージして、スピード感をもってシャープな線質になるようにかきました。
『告白』『神隠し』(新潮文庫)所収
<作品を読んでみての感想>江戸時代を舞台にした小説で「善右衛門」という主人公が過去の罪を告白し、心の葛藤と向き合わせる物語で、感情が惹き込まれる作品だと感じました。
<作品制作に込めた思い>主人公が自分の過去と向き合い、その罪を告白したときの真剣な思いを作品に込めました。
『夜の城』『冤罪』(新潮文庫)所収
<作品を読んでみての感想>雑木林の中の道をふさいだ柵の向こう側には廃城の跡と疫病に襲われた黒谷村があり、そこでは、殺人事件や不気味なことがたくさん起こって、とても怖くなる話だった。
<作品制作に込めた思い>柵で閉じられ、人の出入りができなくなった静かな城を表現した。
『夕べの光』『長門守の陰謀』(文春文庫/講談社文庫)所収
<作品を読んでみての感想>武士の時代に生きる男運に恵まれなく、二度も三度も切ない思いを繰り返すおりんが人生の一大決心をするのに心打たれました。
<作品制作に込めた思い>武士の時代の町人たちの心移りを表せるようリズムが感じられる配置を考えました。
藤沢周平 作品題名書道展
山形県立鶴岡中央高等学校書道部の協力のもと藤沢作品の題名書道展を以下のとおり開催します。
藤沢作品を読んで感じたことをもとに、題名を書き表しました。
書道部の皆様の感性豊かな表現をぜひご覧ください。
●展示内容
・今年3月に当館で展示した鶴岡中央高等学校書道部の揮毫作品6点に加え
新たに制作した作品8点を展示します。
●日程・場所
【櫛引生涯学習センター1階ロビー】 終了しました
・期間 11月26日(火)~12月12日(木)
・会場 櫛引生涯学習センター1階ロビー
(鶴岡市上山添文栄90)
※展示されている題名の作品が掲載された当時の雑誌も展示しています。
【鶴岡アートフォーラム】 終了しました
※高校生アートフォーラム展18と同時開催
・期間 12月14日(土)~12月22日(日)※月曜休館
・時間 午前9時~午後5時30分
・会場 鶴岡アートフォーラム ギャラリー
(鶴岡市馬場町13番3号)
・共催 鶴岡アートフォーラム
ミニギャラリー 第9回 作品題名書道展
「夜の老中」『用心棒日月抄』(新潮文庫)
<作品を読んでみての感想>危険がある用心棒の仕事を頼まれたが、また又八郎は問題を解決し仕事を終えていきすごいと思った。
<作品制作に込めた思い>用心棒という危険な仕事で、又八郎は脱藩してきた人間という危ない感じを行書を使い文字に表現した。
『神隠し』『神隠し』(新潮文庫)所収
<作品を読んでみての感想>初めて藤沢周平の作品に触れて、独特な世界観だと第一に思った。でもその世界観だからこその登場人物の感情の起伏が緻密に描かれていると思った。
<作品制作に込めた思い>題名にもあるとおり「神隠し」の非現実感・現実とのはざまの不安定なようすを自分の解釈で書いた。
『橋ものがたり』(新潮文庫)
<作品を読んでみての感想>どの短編も、切ないものが多く、余韻に浸りながら読み進めることができました。その余韻まで、楽しめるくらい奥が深い作品でした。
<作品制作に込めた思い>登場人物一人一人の美しさが際立っていたので、一字一字に繊細さをもたせるようにした。
『密告』『霜の朝』(新潮文庫)所収
<作品を読んでみての感想>孫十郎は、自分に伝言があると言ってきた磯六を待っていたが現れず、投げ文に書かれた所に行くと、亡くなっていた。誰がこんなことをしたのか、孫十郎が様々なことを調べながら真相に近付くのが面白いと感じた。
<作品制作に込めた思い>誰が磯六や孫十郎、孫十郎の妻を、殺したり、危険な目に合わせたりしたのだろうという不思議な感じを出すために細めに書いた。
「犬を飼う女」『用心棒日月抄』(新潮文庫)
<作品を読んでみての感想>犬の用心棒という楽そうな職を紹介してもらい、仕事をし、巻き込まれる事件を解決し刺客との戦いシーンがあり、おもしろかった。
<作品制作に込めた思い>おとよのまずしかった暮らしやかなしい過去や、やさしい心を、きれいな文字で表すことができた。
『泣く母』『霜の朝』(新潮文庫)所収
<作品を読んでみての感想>小四郎は自分を捨てた母に会うことを恐れていたが、父親は違うが血のつながっている弟を助けるため、母のために行動していたところに優しさを感じた。
<作品制作に込めた思い>この作品を読んで、小四郎の優しさを強く感じたので、優しく、あたたかいイメージを表現できるよう太めの線で少し丸みをおびたように書いた。
『陽狂剣かげろう』『隠し剣秋風抄』(文春文庫)所収
<作品を読んでみての感想>半之丞の乙江への深い愛情が狂気へと変化していき、とうとう残酷な最後を迎えてしまうやりきれなさが印象的。
<作品制作に込めた思い>乙江への愛を叶えることの出来なかった半之丞の思いを、喪失感と無念さが伝わるように書きました。






