第9回 鷲田拓朗さん(合資会社鷲田民蔵商店代表)
更新日:2025年2月26日
創業明治元年、今年で158年目となる鷲田民蔵(わしだ たみぞう)商店。味噌・醤油などの発酵食品を手掛け、鶴岡の食を支え続ける会社の代表、鷲田拓朗さんに地元食文化への思いや、今後の展望についてお伺いしました。
はじめに、「鷲田民蔵商店」についてご紹介ください。
明治元年に初代鷲田民蔵が味噌醸造業として当地で創業しました。間もなく醤油、甘酒、お酢の製造もはじめました。
鶴岡は学校給食発祥の地です。明治22年に大督寺境内に設立された忠愛小学校で学校給食が始まったとされていますが、弊社はその当時から学校給食に関係させて頂いており、現在も庄内地区だけでなく最上地区の学校給食にも携わっています。また、地元病院等の施設、飲食店、県内や全国の主要スーパー等で、鷲田の商品や各企業と一緒につくりあげたプライベートブランドアイテム、各企業でしか買えない専用商品を扱っていただいております。
小さい頃から店を継ごうと思っていたのですか。家業を継いだ理由を教えて下さい。
次男ということもあり、子供の頃は跡を継ぐことは考えていませんでした。大学(醸造学部)進学がきっかけとなり、食品メーカー勤務を経て、平成22年に鶴岡に戻り、受け継がれてきた技と味を父より学び、そして昨年、会社を引き継ぎました。江戸時代から代々続いてきた鷲田家を存続させたいという思いもありました。昔は鶴岡にも30~40の味噌・醤油屋がありました。時代の流れもあり、現在鶴岡で味噌・醤油を造り続けているのは、組合組織以外弊社のみとなってしまいました。さみしいですが、唯一としてブランドを広めていくチャンスではないかと捉えています。
職人による丁寧な手作り製法で、最高の味を造り続けている。
日々、仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
ポジティブに物事を考え、レスポンスを早くすることを心掛けています。時代に取り残されないよう1、2歩先に行けるような感覚を持ち、スピード感を重視しています。また、レッドオーシャン(競争が激しい市場)ではなくブルーオーシャン(市場に競合相手がほとんどいない状態)のキャンパスの中で想像し、色々な可能性を描くことを大切にしています。レッドオーシャンの中に飛び込んでも、価格では大手メーカーにはかないません。魅力あるニッチな商品を開発し、家庭で日々の生活に欠かすことのできない商品をつくることを目指しています。現在のトレンドでもある「簡単な手間で本物の味が楽しめる商品」の開発に取り組んでいます。
江戸時代に建てられた母屋にて。ふすまは、庄内書道教育の大家、松平穆堂の書
課題や苦労していることはありますか。
5年後、10年後、20年後の鷲田をイメージし、1年、1月、日々の目標を頑張っている従業員とともに確実にクリアしていく。それを苦労とは思ったことないですね。苦労と思っていたら仕事が嫌になるし、前には進めません。仕事は終わりのないゲームだと思っています。目標を立て、クリアするとまた次の目標、たまにそこに問題が発生し、クリアしてまた次の目標。壁がきたら『またきたな、乗り越えてやる』という気持ちで立ち向かう。その繰り返しと思います。だから、仕事はおもしろいと思うのです。
鶴岡市民の食生活の変化について、普段感じていることはありますか。
糀ブームや免疫力アップが謳われ、発酵食品が注目されるようになってから、年代問わず日々の食事に気を遣う方が増えたように思います。鶴岡市のユネスコ食文化創造都市認定を機に、弊社も携わらせて頂いてるスマートテロワール事業など、サスティナブルな活動が拡大・周知され始め、「鶴岡の食」に関心を持つ人が増えたと実感しています。例えばスーパーでも、以前は大手メーカーの商品が多く並び、売れることが当たり前でしたが、今は地元企業とのコラボ商品や、スーパーとの共同開発商品が人気商品として販売されています。つまり消費者がそういう商品を求めているということだと思います。その点は非常にうれしく思っています。
今後の展望、チャレンジしたいことを教えてください。
「山形県では発酵食品と言ったら鷲田だよね!鷲田おいしいよね!」と、多くの人に認知して頂けるようにブランディング構築に努め、毎年おいしい新商品を出していきたいです。
今回、給食の「ひな祭りメニュー」で初めての試みとして、弊社が無償提供する甘酒を使った「甘酒プリン」を子供たちに食べていただく予定です。上質な素材を使った、砂糖では味わえない甘さを実感していただきたいです。これからも小中学校の食育に微力ですが携わっていきたいですね。「鶴岡っておいしいもの沢山あるよね」って、舌、鼻、目で小さいときから感じてもらい、大人になってから鶴岡を自慢できる気持ちを地元の皆に持ってもらいたいです。ここ数年、企業とのコラボ商品を色々出させて頂いていますが、今後もコラボレーションをどんどん増やして魅力ある商品を開発し、地元を活性化させていきたいです。
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