広報つるおか2024.9月号
更新日:2024年8月29日
市長の一筆入魂(79)
大学時代、山に登り、高山植物を観察するサークルに入っていた。蒸し暑い夏の夜、部室に向かうと明かりがともっており、そこで流れていたのは浜田省吾や尾崎豊。先輩達の世代の歌だった。
コマクサの咲く尾根を越え、雷鳥を見ながら槍ヶ岳を目指した。この夏、月山に登りませんか、とお誘いを受けたが、前々から予定された公務でスケジュールはびっしり。テントを担いで、山頂を目指したあの頃が懐かしく思い出された。
7月25日、その日、猛烈な雨が庄内に降り注いだ。鶴岡観測所の1時間当たりの降水量は、14時~15時に55ミリを記録。1日の雨量として史上最大の214・5ミリを記録したのだった。
前日(24日)は、県市長会の総会が上山市で開催されていた。午前9時に上山温泉を出発。鶴岡への帰路の車中で、9時13分酒田市、9時20分遊佐町に記録的短時間大雨情報が発表された。9時23分、本市にも大雨警報が発表。9時30分には藤島庁舎から、雨の勢いが強く側溝あふれが数か所発生している、旨の報告があった。9時50分に副市長を本部長とする災害警戒本部を立ち上げている。
10時には、五十川の支流・温俣川の氾濫の危険性が高まったことから、車中から1世帯に対し避難指示を発令、市長を本部長とする災害対策本部を設置することとした。
その後は、11時に京田川、11時45分に山五十川の土砂崩れ、13時に藤島川、14時30分に黒瀬川に関して避難指示を発令するなど対応に追われた。13時5分には酒田市、遊佐町に大雨特別警報が発表。経験したことのない大雨への警告に、本市でも最大限の警戒が必要となった。
さらに、15時に岡町川周辺に、土砂災害の危険が高まった添川に15時15分に、同じく加茂地区には15時45分に、それぞれ避難を指示。20時に開催した対策本部では、大山川の氾濫の危険性が高まったことから、20時12分、辻興屋、面野山に対し避難指示を発令することを決めた。
3回目の対策本部会合後、食事を取るために一旦帰宅。23時に自宅に迎えをもらい再び市役所に登庁すると、田川、由良で土砂崩れが発生したとの報告があり、23時40分に追加で避難指示を発令。その際、緊急安全確保(レベル5)の発令など、深夜でもちゅうちょなく対応することを確認しつつ、何もなければ翌朝7時に状況報告を受けることとした。テレビでは、0時45分、気象庁が記者会見。20時10分に大雨警報に切り替わっていた大雨特別警報が、23時40分に2市町から6市町村へ拡大し、再び発表されていた。「いったん警報に切り替わったのになぜ再び」との質問が飛び交うのを聞きながら、市長室で仮眠を取った。
26日は、5時30分頃に目覚め、6階の防災安全課へ。そこに三和で氾濫が発生しているとの情報が飛び込んできた。6時35分に緊急安全確保を発令、現地に駆け付けると、消防、警察によるボートでの救助活動が始まるところだった。
8月3日、先週の大雨が嘘のような快晴の土曜日だった。ボランティアの皆さんも参画して復旧に向けた片付けが行われる一方で、各地では夏祭りが開催されていた。「イベントは中止しません。」、夏の観光シーズンを迎えるに当たって、7月30日に私はそう宣言していた。夏祭りの週末の夜、私がマイクを握ったのは、部室で流れていた「もうひとつの土曜日」だった。
皆川 治
お問合わせ
メールでの回答が必要な場合は、住所・氏名・電話番号を明記してください。
鶴岡市役所 鶴岡市
〒997-8601 山形県鶴岡市馬場町9番25号
電話:0235-25-2111
FAX:0235-24-9071