広報つるおか2019.1月号
更新日:2019年4月17日
市長の一筆入魂(12)
「書く」ということは自由。
農林水産省に入省して3年目と4年目、市町村交流人事という制度の下で、福岡県の大和町(現柳川市)で2年間を過ごした。平成11年4月~13年3月のことである。その際出会った県庁の職員さんが、柳川藩立花家を題材とした小説を書いていた。私は、「公務員が簡単に本を出せるんですか?」と尋ねた。組織との関係で、「書く」ことの内容、行為に制約があるのではないかと思ったのだ。「役所勤めは窮屈だが、小説は何を書いてもいいんだよ」と、その方は楽しそうに教えてくれた。当時は、そういう生き方もあるんだなと、思う程度だった。
11月28日、高山樗牛奨励賞の授賞式で、そんな若い頃の記憶が思い出された。奨励賞は、庄内地方の小・中・高校生に授与されるもの。今年は3名が受賞したが、私は、その中の一人、金子衣咲さん(余目三小6年)に心を揺さぶられた。
リフォームをしたい なぜなら
家族に苦労させたくないから
自分で 魚のイサキのように
スイスイこぐために
私は リフォームをしたい
金子さんは生まれつき四肢にまひがあり、車いすを使っている。この詩の魚の「イサキ」は衣咲さん自身の名前から来ているものだろう。小説の作品では、夢や未来、宇宙などがテーマとなっている。受賞時の挨拶では、恩師、家族への感謝を、そして「たくさんの人に読んでもらえるチャンス」と応募を後押ししてくれた校長先生のことなど、用意した原稿に視線を落とすことなく、堂々と述べていた。
11月23日、「山戸能」、「山五十川歌舞伎」の奉納上演を鑑賞した。山五十川は、東京で暮らす大叔母の故郷。私は子供の頃、祖父に連れられて何度か訪ねた記憶がある。能と歌舞伎、二つの古典芸能が伝承されていることは全国的にも珍しく、これを楽しむことができるのも長い間保存・継承してきた保存会、地域の方々のおかげ、私たちは感謝しなければならない。山五十川からお嫁さんをもらった我が家の大叔父は、青年団活動で鳴らし、東京で牛乳を売って社長になった。生前は巨樹・巨木を愛し、各地を旅していた。今になって思えば、巨樹を愛する活動は、山五十川の巨木・玉杉への思いからのもので、夫人への形を変えたラブレターだったのではないだろうか。
小説家という夢に向かって、自身の思いを書き続けている金子衣咲さんのように、私も自分の思いや感じたことをまっすぐに表現・発信していくことをこれからも続けていきたい。
皆川 治
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