広報つるおか2023.2月号
更新日:2023年1月26日
市長の一筆入魂(60)
寅から卯へ向かう、その大みそかの未明のことだった。午前4時4分、暗がりの中で携帯電話が鳴った。宮崎危機管理監からだった。雪の関係で何か連絡だろうか、そう思いながら着信にすぐに折り返すと、西目で山が崩れ、2人救助されたが1世帯2人を探しているという。どういうことだろう。にわかには理解しがたく、しかし、私が市長になって初めての事案であること、災害対策本部の立ち上げが必要なのではないかということに頭を巡らせた。副市長に連絡を取るように指示し、すぐに市役所に向かった。
市役所に到着すると、警察、消防が人命救助に当たっているが、土砂の量が多く、現状の体制ではとても対応できないという。5時、吉村知事に電話し、自衛隊の派遣を要請した。また、5時9分、山本東北地方整備局長にも電話し、テックフォースの派遣を要請した。
6時、1回目の市災害対策本部会議を開催、7時45分頃、現場へ。警察の機動隊、消防が救助方針を検討しているところだった。その後、避難者がいる金山公民館に立ち寄り、8時15分頃、金山地区の隣の山口公民館に集まった関係自治会長へ、人命救助に警察、消防が当たっていること、自衛隊の派遣を要請していることなどを説明した。
捜索は夜を徹して行われた。年が明け元日も発見できず、事態が動いたのは2日だった。吹雪の中の懸命の救助も叶わず、2人は帰らぬ人となった。
3日は、上郷コミュニティセンターで地元説明を行い、4日の賀詞交換会は防災服のまま出席することに。6日の第9回市災害対策本部会議では、前日の専門家による緊急調査を踏まえ、崖の傾斜と距離から危険性が低いと考えられる1世帯2人は帰宅可能として避難指示を解除した。一方で、斜面から湧水があるため水抜き等の安全対策を要する1世帯3人については、対策の効果を見極めた上で帰宅を判断することとし、当面の避難継続とした。また、建物が全壊したエリアに近い4世帯13人については、早期の帰宅は難しいと判断し、避難継続とした。ボーリング調査などに期間を要し、更なる調査の必要性の有無や対策工事などを勘案すれば避難は相当程度長期化する厳しい見通しとなった。
1月5日、数え100歳を迎えた方へのお祝いに、淀川町、板井川、越中山を訪問した。1月8日の二十歳を祝う会の際、そのことに触れ、東北で一番広い面積を有し、今ではユネスコ食文化創造都市となった本市の、地域の田んぼを、畑を守り支えてきた100歳の先輩のお話を伺い、感謝の気持ちで一杯になったことを紹介した。また、土砂災害の避難者を励まそうと加茂水族館のスタッフが旬の食材のみそ汁を振る舞ってくれたことも紹介した。困ったときはお互い様の精神が受け継がれている鶴岡市、冬は厳しいが必ず春がやってくる。二十歳の節目を迎えた若者たちが、ご家族、学校の先生、地域の皆様への感謝の気持ちを忘れず、未来に向かって飛躍してほしいと、心から願った。
皆川 治
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