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広報つるおか2019.8月号

更新日:2019年8月22日

市長の一筆入魂(19)


 それは誰にとっても突然のことだった。令和元年6月18日火曜日22時22分。
 私は自宅でパソコンに向かっていた。強い揺れ。一瞬、石巻市の現地で経験した東日本大震災が頭をよぎった。22時25分、秘書係の上野主幹に電話し、迎えを依頼。防災服に着替え、市役所に向かう準備を始めた。テレビでは津波注意報を知らせている。早坂危機管理監に連絡し、避難の呼び掛け状況を確認。地震発生2分後の22時24分、J アラートが「沿岸付近の方は津波に注意を」と自動発信したはずだった。しかし、温海の大部分の地域では停電が発生し、実際には各戸に設置されている有線放送設備等は呼応しなかった。22時46 分には、防災行政無線の屋外拡声子局(いわゆる「ラッパ」)により、市職員が高台避難を呼び掛けたが、「聞こえなかった」、「聞き取りづらかった」という声が寄せられている。今後の大きな反省材料だ。
 23時頃、市役所に到着すると、職員や警察、自衛隊、報道機関などが続々と集まってきた。沿岸部では地震直後から自主的に高台避難が開始されていること、温海地域での停電、道路の陥没の発生などの情報が集まってきた。最初の災害対策本部の会合を23時15分頃に開催。その後は断続的に24時、日が替わって19日深夜1時、2時30分に開催。早朝6時15分に再度集まることとし、一旦帰宅した。
 19日早朝の本部会合後、温海の被害現場を回った。温海ふれあいセンターではホール天井が一部落下。各旅館でも瓦の落下、内壁の破損などが発生。また、温泉の命である源泉くみ上げ・配湯設備3か所で破損があり、実質的にお湯の供給がストップ。旧温海グランドホテル前では復旧作業が行われていた。鼠ヶ関港でも物揚げ場での亀裂・段差を確認。
 その日の夕方、再度現場に。小岩川では、建設業協会の皆さんの協力の下に瓦の撤去とブルーシートの設置に追われていた。また、避難所である温海温泉林業センターには、高齢者に交じって子供の姿も。湯之里地内の市道に大きく亀裂が入り、市営紅葉岡住宅の方々など、しばらく避難を継続してもらう必要が生じており、何とかせねばと、胸が痛んだ(その後、住居周辺の安全性の確認を経て、6月20日18時に避難所を解消)。
 6月19日、全国市長会長の立谷相馬市長からの助言を受け、熊本地震を経験した大西熊本市長に連絡。職員の派遣について相談したところ、先方快諾。大阪北部地震を経験した大阪府枚方市からは独自に職員が支援に駆け付けてくれた。その後も、り災証明書の発行に向けた調査体制構築など、多くの関係者にお世話になった。
 現場の要請を待っていたのでは対応が遅くなってしまうことを、50日間石巻市役所を支援した東日本大震災の際に経験した。災害時には、要請を待たずに動く「プッシュ型」、押し掛けて対応することが重要だ。直ちに現場へ行き、状況を把握する。ニーズを先取りして瓦撤去や酒蔵支援のボランティアを派遣する。村上市との合同本部を立ち上げる。住民説明会を開催し、支援策を被災者に詳しく説明する。障がいのある方々に地震の際に困ったことがなかったかを尋ねる。山形県沖地震への対応の中で、改めてリーダーの責任の重さについて考えずにはいられなかった。

皆川 治

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