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広報つるおか2022.10月号

更新日:2022年10月27日

市長の一筆入魂(56)

 9月5日、市役所の玄関先に真っ赤なヤマボウシの実が落ちているのが目に留まった。慌ただしく登庁する職員はまだ半袖だが、季節は巡る。


 大黒舞が継承され、北前船で栄えた当時の町割りがそのまま残る街並み。令和のスタートとともに日本遺産「北前船寄港地・船主集落」に仲間入りした加茂地区では、自治振興会など関係者が一丸となって地域づくりに取り組んでいる。同じ年には山形県沖地震が発生し、老朽化した地域活動の拠点の改築が待ったなしとなっていた。9月1日、加茂コミュニティ防災センターの開所式が行われた。この施設は、地元の皆さんの利用はもとより、加茂を訪れる方々の利用も想定し、玄関付近にミニキッチンを備えた交流スペースが設けられ、外部トイレも確保されている。加茂水族館やレインボービーチに加え、新たな渚の交番の設置も進められるなど、今後一層の交流人口の拡大が期待される。雨天の船出となった施設の開所式だったが、雨よけのデッキに並んだ関係者は笑顔だった。地域の思いの詰まった建物が、交流を大いに促進し、街に元気を生んでいく。


 9月4日、松根塾獅子天狗舞伝承班の笛の音が荘銀タクト鶴岡に響き、ギターとサックス、そしてダンスとの即興の競演が観客をステージに引き込む。芸術の秋の開幕を告げる鶴岡市芸術祭の記念公演を鑑賞し、その後は白甕社美術展の授賞式へ。各作品の力強さ、個性が光を放ち、若い世代の台頭に勇気づけられた一方で、作品に投影された戦争の影も印象に残った。


 その日の朝、4時18分、庄内総合支庁からホットラインが入った。青龍寺川・高坂と京田川・三和で避難判断水位を超過したことの連絡だった。その後、雨は上がり、私は「虹」という曲を聴いてから芸術の秋の諸行事に出掛けたのであった。一時的に強かった雨が上がる。雨が上がった後の虹にほっとするような笑顔が鶴岡市芸術祭を通じて市民の皆様に広がることを願っている。


 9月10日、JA鶴岡だだちゃアリーナで開催された東北地域シニア・交流のゲートボール大会での始球式。大きめのゲートを通過、ほっと一安心し、夕方の「じろで庄内」の前夜祭から帰宅し車を降りた。夜空を眺めると稲穂の向こうの山並みに、ぽっかりと月が浮かんでいる。中秋の名月が翌日の快晴を約束し、出羽三山、庄内平野、日本海を巡る最長215kmのコースを自転車が駆け抜ける風景が心に浮かんだ。猛暑と大雨を乗り越え、実りの秋がすぐそこに来ている。


皆川 治

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