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広報つるおか11月号

更新日:2018年11月2日

市長の一筆入魂(10)

  秋の深まりの中で、猛暑と度重なる大雨に悩まされた今夏を振り返るとき、改めて私たちは自然と共に生きていることに思いが至る。
  市内の集落近くにまで及んだ大雨の被害箇所を調べると、かつては農業用の水路として使われたが管理が行き届かなくなったものや、山の手入れが十分行われなくなったものがその遠因となっているケースに行き着く。洪水調節機能を有する多目的ダムは重要だが、健全な森林、水を受け止める農地が減災にも大きな役割を果たすのだ。
  世界的な視点から見れば、私たちは、アジアモンスーン気候の中で生きている。巨大な大気と水が循環するこの気候の下で、豊富な水を利用した稲作が発達した一方、常に水害に悩まされてきた。
  そこで大事なキーワードが里山である。SATOYAMAとして、今やそのまま世界に発信される概念である。「自然を守ろう」と言うとき、しばしば手付かずの自然が想起されがちだが、日本で唯一の食文化創造都市に暮らす私たちは、生活や生産に密着した農山漁村の田畑、森林や水辺、つまり人の手が加えられた「二次的自然」の重要性を認識する必要がある。
  豊かな食文化は、農業などの営みを通じ自然環境に働き掛けて得られる恵みを基盤としている。農業は1年サイクルが基本だが、林業では50年、100年サイクルで収穫、伐採が行われる。在来作物の代表的存在であるかぶは、杉を伐採し、その後、焼畑が行われ作付けされる、実に壮大な循環の下でその恵みがもたらされる。短期的な利益にとらわれがちな現代人からすれば、手間暇がかかる里山などの「二次的自然」を維持していくことは容易ではない。
  9月30日、第20回目となる環境フェアが開催された。来賓として出席された環境省の審議官からは、多くの市民が参加し、地球温暖化などの環境問題を考える取り組みを継続していることにお褒めの言葉を頂戴した。鶴岡市は、今年6月、地球温暖化防止対策のための国民運動である「クール・チョイス(=賢い選択)」への賛同を宣言した。この取り組みを契機に環境省から補助金も交付頂いている。
  環境問題への取り組みは、何も世界のリーダーだけが進めるものではない。冷暖房の温度調節、LED照明の導入や、公共交通機関の積極利用、ゴミを減らすことなど、私たちの暮らしの中で身近にできることがある。山、平野、河川、海、全ての自然環境がそろった鶴岡だからこそ、人が手を加え続けることによって維持される環境を守ることを含め、「できることから始めよう」。これからも自然と共に生きていくために。

                                                             皆川 治

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