広報つるおか2023.10月号
更新日:2023年9月26日
市長の一筆入魂(68)
枯れ木にとまった鵙(もず)。枕元に置かれた藤沢周平先生の小説の一文で剣豪の絵を思い出した。
9月2日、鶴岡市芸術祭の開幕式典に参列した。毎年この時期に開催されるセレモニーは、秋への季節の変わり目が感じられ、ゆったりとした気持ちで参加することができる。アートフォーラムのガラス窓からは久しぶりの雨が見え、ストライプと白のシャツが混じった合唱が響いた。
大変な猛暑の夏だった。電気代、ガソリン代が値上がりする中での耐えられない暑さ。だだちゃ豆農家の友人は、8月下旬に最盛期を迎える「白山」の収穫を例年よりも1週間早く終えたという。
8月24日、急きょ、ほ場を巡回し、つや姫、はえぬき、だだちゃ豆の状況をJAの皆さんから教えていただいた。稲は刈取りが早まることを告げ、立ち枯れただだちゃ豆から来年の作付けに必要な種の心配が頭をよぎった。翌日には、市農作物高温対策本部を設置し、米の胴割れ被害などを軽減するための適期収穫の呼び掛けを強化すること、今後の動向を注視していくことを確認した。
9月1日に解禁された底引き網漁もスタートは厳しいものとなった。猛暑の影響は、子供たちの通学や運動会、農産物や水産物、住民の健康など、広い分野に及んだ。
9月3日、創立99周年を迎えた白甕社の美術展を鑑賞しながら、作者がそこに込めた思いを考えた。時代背景とともに描かれた高校生。風がそよぎ、煙、生活のにおいがしそうな、その場で描いた光と空気感が伝わる山々の姿。戦争と平和、美しい自然と薄暗い水辺。絵は何かを語り掛けていた。
9月10日、54回を数える児童生徒考案創作展の表彰式では、真剣な作品、思わずほほえんでしまうアイデア作品が並んだ。鶴岡市賞の大山小学校を代表して賞を受け取った相蘇蝶羽(あいそあげは)さんの作品は、災害時に必要な物が枕に詰めてあり、いざというときには防災頭巾にもなる優れ物だった。シュレッダーと見せかけた貯金箱、入院していても本物のような線香花火を楽しめる光ファイバーの花火。斎藤外市翁から秋山好市翁に連なる発明の心が半世紀を超える考案創作展の原点にあることを忘れてはなるまい。
子供の頃から時代劇が好きだった。特に好きだったのは関ヶ原の動乱を挟んで剣の道を究めようとした宮本武蔵。今は佐藤賢一先生の『チャンバラ』を読み進めている。
武蔵が描いた枯れ木にとまった鵙。武蔵はその絵に、鵙の姿に何を託したのだろうか。日々の発見、出会いに感謝しながら、芸術の秋、スポーツの秋を過ごしたい。
皆川 治
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