広報つるおか2020.8月号
更新日:2020年7月28日
市長の一筆入魂(31)
市長という仕事柄、様々な分野の方とお会いし、いろいろなお話を伺う。ある時、こちらから話し掛けると、荘内病院にお世話になったのでお礼を申し上げたい、とおっしゃる方がいた。この話を含め、病院や医療の話を本欄に書きたいと思いながら、つい時間がたってしまった。時に高度に専門的な領域を含むこともあり、筆を執るのに覚悟が要り、とうとう今回になってしまった。
その方は、山形市在住の方だった。平成30年の秋、夜釣りのために鶴岡の海へ。その際、指に釣針が刺さり取れなくなった。荘内病院の救急センターを受診し、釣針を除去、とても親切にしてもらったという。荘内病院にそのことを確認したところ、「特別な印象はなく、通常の対応をした」旨の回答だったが、実は別の医療機関では釣針を取ってもらえなかったそうであり、ようやく除去してもらえた際の患者側の安どした気持ちはいかばかりであっただろうか。
7月8日、市立荘内病院と国立がん研究センター東病院との連携協定が締結された。健康で長生きしたい。地方で安心して暮らすために、地域医療の体制の充実は誰もが抱く切実な願いだ。希少がんなど治療が難しいがんに同病院の専門的な知見を得ることができれば、地方にとってこれほど心強いことはない。
協定締結の翌日に訪問を受けた際、がんに対する鶴岡市民の理解の高さは全国に知られているとのお話を伺った。がん患者の療養を家族、地域で支える長年の取り組みや、「からだ館」の取り組みなどのことだと思うが、がん医療の最先端を担う先生の言葉はうれしかった。私からも鶴岡には文化活動など勉強熱心な市民性があり、体のこと病気のことについてももっと学びたいという方々がいると、返す言葉に力が入った。
市民の勉強熱心さ、荘内病院に対し、改善しより良い病院になってほしいという思いは、時として情報提供の不足も相まって厳しいご意見となり私のもとにも届いた。「鶴岡の医療をなんとかせねばの」と民間の研究会も立ち上がっている。市民の期待に応える病院となるために行政にできることは何か。昨年度、市健康福祉部に「地域包括ケア推進室」を設置し、また、「鶴岡市地域医療を考える市民委員会」を立ち上げた。課題は多方面に及ぶが、荘内病院が地域で果たしている役割、日夜奮闘している現状を理解してもらい、市民の皆様自身から発信してもらえれば、との思いもあった。庄内全域において救急搬送の約4割、ハイリスク分娩の約6割、脳血管内手術件数の約9割を担うなど、荘内病院は重要な役割を担っている。これらのことを荘内病院では、「市民委員会」や広報誌「黎明」などを通じ積極的に発信している。「まだまだ改善してほしい」そういう声を伺うのは事実だが、「荘内病院が変わってきた、対応が良くなっている」という前向きな声も頂いている。大正2年に東西田川郡の組合立病院、庄内地方唯一の総合病院として誕生した荘内病院。107周年の伝統に国立がん研究センター東病院との連携が加わり、「がん相談外来」の開設、そして将来の遠隔診療の実現へと期待が広がる。
荘内病院のシンボルでもあるプラタナスは、ギリシャのコス島から鶴岡養護学校へ、そして荘内病院へと引き継がれてきた。今回のご縁が、プラタナスのつながりの様に鶴岡での医療従事を目指す若い世代に、そして市民の皆様にとって、希望の灯の一つとなることを願っている。
皆川 治
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