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広報つるおか2024.8月号

更新日:2024年7月29日

市長の一筆入魂(78)

 6月下旬の早朝、集落の公民館に向かった。公民館は森山への入り口に建っており、建物を守る擁壁がある。子供の頃から、その壁に向かってサッカーボールを蹴ったりしていた。その朝は、ボールを握り、数球投げ込んでみた。

 6月29日、大西一史熊本市長を講師にお迎えして、防災講演会を開催した。熊本地震の陣頭指揮を執った大西市長のお話を聞こうと、熱心な聴衆で会場のマリカ市民ホールが埋まった。不眠不休で熊本地震の「前震」の対応に当たり、休息を取るために自宅に帰っていた際に「本震」がやってきた。停電が発生し割れたガラスを踏んで足を負傷、その際の包帯の巻かれた写真がスクリーンに大きく映し出された。いざ災害が発生すると、予定したとおりに事は進まない。大西市長はユーモアも交えながら、自らの経験を語った。

 3人のパネリストを交え語り合う中で、「逃げない人にどう対応するのか」ということも話題になった。津波警報が発表されても浸水域から逃げない、その心の内に入ることは難しいが、一次避難場所を明確にしたり、寒さへの対応の改善策を講じたりすることで、避難につなげることはできるはずだ。会場には、熊本から鶴岡に引っ越してきた小学生も参加していた。歴史的なご縁と現代の交流を確認する、有意義な講演会となった。

 気候変動の影響なのだろうか。昨夏の猛暑は、サクランボの双子果となって表れ、6月上旬の気温上昇により、熟し過ぎ、実割れが発生。県内全域でサクランボが不作となった。本市では約23haで栽培されており、ふるさと納税では約1億円の寄附金がある人気商品となっている。今年は、代替品の発送などで対応せざるを得ず、農家の皆さんにとっても、心待ちにしていた消費者の皆さんにとっても痛手となった。

 漁業にも異変が起きている。昨年度の県全体の漁獲量は約2、700tで、平成元年度以降の最少を記録したのだ。量の減少に伴い魚の値段は上昇したが、県全体の漁獲額も初めて20億円を下回る厳しい結果となった。今年の春の漁獲量はやや持ち直したものの、がんばる水産業応援事業費補助金や、学校給食での地元産の活用、魚のおいしいまち鶴岡キャンペーンなどを通じ、引き続き応援していく必要がある。

 壁に向かって投げ込んだ練習の成果を試すときが来た。米国の姉妹都市、ニューブランズウィック市を訪問した際、2A(ダブルエー)のサマセット・ペイトリオッツの試合で始球式を行った。「ストライクだったのか?」との質問に、私は「ほとんどストライクだった」と答えた。相手の笑顔を見て、練習の成果と英語が伝わったのだと安どした。


皆川 治

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