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広報つるおか2020.11月号

更新日:2020年10月29日

市長の一筆入魂(34)

 秋晴れのある日、羽黒山五重塔へ、玉川寺へ散策に出掛けた。風力発電の問題が決着がついたからか、それともオンラインの大学生として過ごす長女と一緒だったからか、久しぶりに開放感のある休日を過ごした。また、別の週には、旧風間家住宅の丙申堂、別邸の釈迦堂へ、更には藩校致道館を訪れた。古い建物が好きなこともあり、威厳を感じながらもどこか落ち着く感じがした。この秋、県内、東北各地から70校以上もの学校が、本市を修学旅行先に選ぶ、そんな動きが広がった。荘内藩の城下町、世界一のクラゲの水族館、世界に誇る食文化や温泉、3つの日本遺産を有する本市の底力が評価されたのだろう。

 10月1日、新鶴岡市となって15周年の節目を迎えた。その日の朝、私は、旧温海町の戸沢に伺った。この日、温海地域乗合タクシーの試験運行が4つの路線(戸沢線、平沢線、関川線、菅野代線)で開始され、その出発式が行われたのだ。山間部から海岸部まで、東北で一番広い鶴岡市。通学や通院、買物など、毎日の暮らしに必要な移動手段の確保は、地域住民の切実な願いだ。温海地域では、地元自治会や観光、福祉等の団体が運営主体となる協議会が本年5月に立ち上がり、準備が進められてきた。その前日には庄内交通の路線バスが廃止され、その代替手段の確保が必須となっていた。例えば、戸沢から五十川駅前までは200円、温海クリニックまでは400円で、月曜から金曜日まで毎日2往復する。戸沢線、平沢線は路線バスの様に乗降場所を定めて予約不要で運行する。関川線、菅野代線は、予約に応じて自宅近くで乗り降りできる方式となっている。

 また、藤島地域の長沼地区・八栄島地区では、10月5日から10日までデマンドタクシーのモニターテスト運行が実施された。公共交通を取り巻く状況は更に厳しさを増しているが、バス、タクシー等の事業者の皆様とも連携しながら、地域の活力を引き出す取り組みを進めていく必要がある。

 大学を卒業して平成9年に役所勤めを始めたとき、一番最初に取り組んだ仕事の一つが、申請・届出の際の押印の見直しだった。時代は巡り、回る。デジタル庁の新設などとともに、「はんこの廃止」が我が国の論点に浮上している。平成9年7月の事務次官等会議申し合わせ「押印見直しガイドライン」は、押印の廃止による申請・届出の電子化・ペーパーレス化の促進が念頭にあったが、国も地方もいまだ多くの手続きが紙ベースで行われている。当時も、国内有数のはんこの産地である山梨県の関係者が立ちはだかっているから前に進まないとか、事情通の先輩が教えてくれたことが懐かしい。

 「押印見直しガイドライン」の狙いは申請・届出を行う国民の負担の軽減だった。どうしてもオンラインでは対応が難しい人のためには、紙による申請も必要だろう。取り残される人がいないように、見直しをしてもっと便利に、幸せを実感できるように、本市の行財政改革でも、鶴岡らしさが、旧6市町村それぞれの個性が、更に発揮されるよう、その点だけはくれぐれも忘れずに議論を進めていきたい。



皆川 治

 

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