広報つるおか2025.10月号
更新日:2025年9月29日
市長の一筆入魂(92)
我が家は東を向いている。朝、太陽が昇ると、その光が家の中に取り込まれる。農家の古い造りの家なので、朝早くから仕事に向かうための工夫なのだろう、とぼんやりと考えていた。
10月3日に生まれた私。水田が黄金色に輝く季節だった。2つ上の姉がトラックの荷台から見つめる先には、稲刈りをする父。その姿に目を輝かせて、「あれ(を見て)」と声を上げていたという。今年は、例年よりも早目に稲刈りが始まった。このコラムがお手元に届く頃には、刈り取られた後の稲株の水田が広がっていることだろう。その晩秋の田んぼの中で野球をしていた少年時代が思い出される。
9月6日、第20回鶴岡市芸術祭の開幕式典に伺った。旧鶴岡市と藤島、羽黒、櫛引、朝日、温海の5つの旧町村が広域合併した、いわゆる平成の大合併から20周年の節目の年。夕方には、第40回の節目を迎えた水焔の能へ。櫛引地域黒川地区で継承される神事能・黒川能の幽玄の舞に魅了された。
まだ暑かった8月9日、その黒川地区の春日神社において、公儀の翁伝授山籠りの結願日を迎える祭典が行われた。その様子を静かに撮影している人がいた。2月の王祇祭はもとより黒川能にまつわる行事で度々お会いしていた伊藤桃与さん。黒川村に500年以上続いてきた王祇祭をめぐる暮らしを、映画にして上映するという。水焔の能に着物姿でいた伊藤桃与監督が撮影したドキュメンタリー。王祇祭までの膨大な準備を追った「王祇様と暮らす」。10月の中旬からの鶴岡まちなかキネマでの上映が楽しみだ。
8月23日は、羽黒山スギ並木保全とまちづくりシンポジウムで羽黒町手向地区へ。その前段で、手向地区自治振興会などと「持続可能な歴史・観光まちづくり推進に関する協定」を締結した。精神文化を投影した宿坊街の街並み景観整備には、市も一緒になって取り組んできた。協定締結を踏まえ、空き家問題にも踏み込んで対応していきたい。天宥別当も植えたという杉並木の保全については、地元の協議会が中心となって、新たなスキームの導入が検討されている。
黒川や手向だけではない。湯田川温泉神楽や大谷獅子舞、赤川花火やおぃやさ祭りなどなど、この夏も、東北一広い鶴岡市の各地域地域で、伝統をつなぎ、未来を創造する住民主体のまちづくりが展開された。
20回目の鶴岡市芸術祭、その記念講演で、シルクロード・敦煌、その石仏がある窟の窓は、東を向いているということを知った。我が家も、東向きの窓から、真っ先に仏壇と神棚に光が差すように建てられていたのだった。
記録を残す、私が学んだことを市民の皆様にお知らせしたい、ともに学び合い、街を成長させたい、その思いで原稿を書き上げることができた。鶴岡の暮らしを愛し、楽しむ、市民の皆様に少しでもお役に立つ情報がお届けできたとすれば、望外の幸せです。2期目の一筆入魂をお読みいただいた市民の皆様に心から感謝と御礼を申し上げます。
皆川 治
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